■「人付き合い」が付いてくる

 汗を誘う残暑の中、若者たちは舞台の小道具作りに打ち込む。「公演、いつ?」。玄関から顔をのぞかせた住人が声をかけた。

 京都市北区等持院の吉田アパート。築後50年を超える木造2階建はかつて、男子学生の下宿用だった。ワンルームマンションが市内に乱立し、一時、入居者が激減したが、現在は若い社会人や夢を追う劇団員らで満室だ。

 「マンションは無機質で退屈だった」。会社員の秋元陽さん(32)は、就職して一度は退去したものの、すぐに戻ってきた。部屋は4畳半。台所やトイレは共同だ。プライバシーが限られても、味のある建物や家庭的な雰囲気はかけがえがないと思った。

 「公演、みんな行くって言ってたよ」。家賃は1万5千円まで。漏れなく「人付き合い」も付いてくる。


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