■増える女性客 変遷映す鏡

 顔そりを施してもらう男性の隣で、女性客が髪を手入れしている。長年使い込まれたタイル床のこの店では、理容と美容が混在する。

 京都市左京区岡崎の田中理髪店。「父の代には男性客ばかりでした。時代の流れです」。店主の田中絢子さん(63)は振り返る。1939(昭和14)年に同店を開いた父は理容一筋だった。だが、男性の美容室志向や格安カット店に押される中、絢子さんが15年ほど前から女性のセットや毛染めなども始めた。

 今では女性客が半数を超えたが、常連の男性や近くの金戒光明寺の僧侶など幅広い客が古い木戸を開ける。

 「いらっしゃいませ」。絢子さんの声が明るく迎える。父は3年前に他界した。88歳まではさみを手に向き合っていた鏡は今、変わりつつも続く店のにぎわいを映している。


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