■剣道は戦いごっこじゃない

 「めぇーん」。甲高い声を上げた少年剣士の竹刀を、先生が受け止める。一瞬の交錯。竹刀の乾いた音が堂内に響く。

 宮本武蔵と吉岡一門が決闘したと伝わる「一乗寺下り松」(京都市左京区)にほど近い京都下り松道場。1969(昭和44)年にここを開設した剣道教士七段の故・楢崎角蔵さんは、勝負よりも人間形成に重きを置いた。

 指導者が変わった今も、指導の方針は受け継がれている。通い始めて7カ月の円城友一君(8)は「戦いごっこが好きで始めたけど、剣道は戦いごっことは違った。おじぎや返事をしっかりしないといけない」と話す。

 「礼」。けいこの最後、正座の子どもたちが先生に深々と頭を下げる。堂内にひとときの静寂が訪れた。またすぐに、はしゃぎ回ってやかましくなるのだけれど。


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