Kyoto Shimbun


環境を考える

どうする核廃棄物

 核廃棄物は、二十世紀が生み出した最もやっかいな負の遺産といわれる。なかでも、原子炉内で発生し、核弾頭にも使われるプルトニウムは、半永久的に強い放射能をもち、処分が難しい。冷戦後の米ロ両国の核軍縮に伴い、今後数百トンの余剰プルトニウムが出ると見込まれる。日本でも、原子力発電所の使用済み燃料にかなりのプルトニウムが含まれている。環境汚染を引き起こさず、どうプルトニウムや核廃棄物を処分していくのか、模索が続いている。

困難なプルトニウムの処分

 原発を運転すると、プルトニウムは必然的に発生する。天然ウランを濃縮した核燃料を原子炉で三年間燃やすと、使用済み燃料の中にプルトニウムが約一%含まれる(図参照)。その「利用か廃棄か」が今、原発をめぐる議論の中心になってきている。

 国や電力会社は「利用」を推進してきた。再処理工場で使用済み燃料からプルトニウムを取り出し、高速増殖炉で燃やせば、従来の原子炉では利用できなかった天然ウランの大部分(ウラン238)をプルトニウムに変換し、再び燃料として使うことができる。

 再処理工場(青森県六ケ所村)と高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)の建設を進めてきた科学技術庁は「ウラン鉱石は埋蔵量が限られている。プルトニウムを徹底的に利用し、ウラン資源を節約すべき」(核燃料課)と説明する。

 これに対し、民間の原子力資料情報室(東京)は「プルトニウムは非常にエネルギーを持っているが、それだけに危険な物質。現在の技術レベルでは安全が保証できない。使用済み核燃料は再処理せず、高レベル核廃棄物と一緒に廃棄すべき」と主張する。

 従来型の原発が原子炉の冷却に水を使うのに対し、高速増殖炉は化学的に激しい性質をもつ液状ナトリウムを使う。一九九五年の高速増殖炉「もんじゅ」の冷却材漏れ事故は、プルトニウム利用の技術的な難しさを浮き彫りにした。

 「もんじゅ」事故を受けて政府が新たなプルトニウム利用策として打ち出したのが、従来型原発でウランとプルトニウムの混合燃料(MOX)を燃やすプルサーマル計画だ。今秋にも高浜原発(福井県)で本格運転が始まる。余った核兵器用プルトニウムの処分に悩む米国でも、プルサーマルが実施される見通しだ。

 吉岡斉九州大教授(科学史)は「使用済み燃料の再処理やプルトニウム利用は経済性がなく、電力会社も科技庁も手を引きたいはずだが、再処理をやめるというと、使用済み燃料の捨て場所が問題になるため、うかつに言えない。また、英仏に再処理を委託していプルトニウム五十トンが日本に返ってくる。米国の核不拡散体制に従うなら、これを在庫として抱えているわけにはいかない」とプルサーマルの背景を説明する。

 これまで日本の原発からは約一万四千五百トンの使用済み燃料が発生し、毎年約千トンずつ上積みされている。現在は原発敷地内の貯蔵プールに一時保管されているが、十数年でいっぱいになると予想される。

 今月三日、伊方原発(愛媛県)から使用済み燃料十一トンが六ケ所村の再処理工場へ移されたが、再処理工場から出る高レベル核廃棄物の最終埋め立て場所は、見通しが立っていない。

 「原発はサウジアラビアの石油以上のエネルギーを供給している。二酸化炭素(CO2)も出さず、温暖化対策としても必要。核廃棄物は地下深く、安全に埋められる」。東京電力の担当幹部は強調する。

 一方、温暖化防止に取り組む市民団体・気候ネットワーク(京都市中京区)の田浦健朗事務局長は「核廃棄物は深刻な環境汚染を引き起こす恐れがあり、長期の管理が必要。それに伴うエネルギー消費を勘案すると、果たして原発がCO2削減になるの か。風力や太陽光を活用すべき」と話す。

 賢明な選択はどちらなのだろう。(1999年9月9日掲載)

 ▽プルトニウム(P239) 自然界にはほとんど存在しない放射性元素。一九四〇年、アメリカ人科学者がウランから人工的に作り出した。名前は冥王星(プルート)に由来。ウランの数万倍の強い放射能をもち、核弾頭に使用される。現在、全世界で核兵器用約二百二十トン、使用済み燃料などから分離した約百八十トンのプルトニウムが存在する推定されている。


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