Kyoto Shimbun


環境を考える

京都の紅葉に異変

 京都の紅葉はひときわ美しいと賞賛され、多くの観光客を引きつけてきた。寒暖の差が著しい盆地だから、という。ところが最近、こんな声を聞く。「昔は全山が赤く燃えるようだったのに、今は一部しか色が変わらない」「紅葉が赤茶けて汚い」。紅葉の時期も年々遅くなって、見ごろが十二月になる名所も出てきている。京都の紅葉に、何が起こっているのだろう。地球温暖化の影響なのだろうか。

全体に色づかず時期も年々遅れ

 気象庁勤務の経験のある増田啓子龍谷大助教授(環境学)は、二年前に赴任した京都で、気候と紅葉の研究を始めようと、紅葉の名所である有名寺院や公園を歩いて、がっかりした。「楽しみにしていたのに、あまりに汚くて」

 左京区で自然観察会を開いているフィールドソサイエティー代表の久山喜久雄さんも、首をかしげている。「ここ数年の紅葉には、何かみずみずしさを感じない。気候の微妙な変化で、木に元気がなくなっているようで」

 紅葉の色づきが美しかったり、くすんだりするのはなぜだろう。紅葉のメカニズムは、京都府立植物園によると、こうだ。秋になって気温が下がると、樹木の葉に糖分が蓄積されて赤色色素(アントシアン)を作る。一方で、緑色色素を持つ葉緑体(クロロフィル)が分解する。こうして赤色が目立つようになる。

 赤色色素を作らないイチョウは、葉緑体が分解して、もともと葉にある黄色色素(カロチノイド)が現れて黄葉する。カエデやウルシの紅葉が美しいのは、糖分を蓄積しやすいためだが、その色合いは気候条件によって違ってくるという。

 カエデを研究する永田洋三重大名誉教授は、美しい紅葉の条件として▽充分な日照▽五度前後の最低気温▽適度な水分−を挙げる。さらに「徐々に気温が落ちゆっくりと季節が変わっていくのが最も良い」と付け加え、残暑や急激な気温変化は好ましくないという。  二年前の紅葉がいま一つだったのは、降水量が著しく少なく、十月から十一月の最低気温の変動が激しかったからとみられる。

 京都では、美しい紅葉の条件を満たしているのだろうか。紅葉の名所、高雄や大原などの山間地は最低気温が低く、清滝川など清流が流れ、条件としては良さそうだ。しかし、市街地では最低気温が年々上昇している。十月中の最低気温の平均値をみると、九〇年までは六・三度だったのが、九九年までだと七・〇度と〇・七度アップしている。

 紅葉になる時期を、京都地方気象台(中京区)は、敷地内にあるイロハカエデで測定している。この測定データが残る七四年から九〇年までの紅葉日を見ると、平年値は十一月三十日となっている。

 平年値の見直しは十年に一回のため、最近の傾向はつかめないが、記者が七四年から九八年までのデータから計算してみると、平均で十二月一日となった。紅葉の時期は少しずつ遅くなり、ついに十二月にまでずれ込んでいることが分かった。

 高雄(右京区)の紅葉の見ごろは、十一月中旬だったが、最近は十二月初旬でも紅葉が残るようになった。昨年も色づきが遅く、地元の観光施設ではキャンセルが相次ぐなど、大きなダメージを受けたという。

 高雄保勝会は今年二月、紅葉の条件である日照を確保するため、シイやカシの木を伐採した。かつてカシは炭の原料や建築材として使われていたが、今では伐採する人がいないのだ。

 自然観察会で里山を見てきた久山代表は、紅葉の美しさを左右するものは、気候のほかにもあるという。「植林で杉などの単一種が増え紅葉が目につきにくくなってきた。それに里山に人の手が入らなく、紅葉が成長の早い木の中に埋もれてしまっているのでは」

 紅葉の異変の背景に、増田助教授は地球 環境の変化や都市化の影響をみている。「地球温暖化の影響が、大きく現れるのが最低気温です。さらに道路舗装やコンクリート建物、エアコンの普及、人口の集中などの都市化も、最低気温を押し上げている。そうした最低気温の上昇が、紅葉の時期を遅らせているのです」

 地球の微妙な変化を映す紅葉。この秋、気温の変化や降水量が気になった。みなさんは色鮮やかな紅葉に出会えましたか。(1999年11月18日掲載)

 ▽紅葉 温帯で見ることができる現象で、落葉樹の葉が枯死する前に赤や黄、黄褐色などに変色することをいう。イロハカエデ、ヤマモミジ、ニシキギなどが紅葉しイチョウ、ケヤキなどは黄葉する。日本は気候や地形の関係から、狭い地域に多くの樹種が混在しているため、特に色彩の変化に富んでいる。


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