Kyoto Shimbun


環境を考える
ゼロエミッション

 「ゼロエミッション」。聞き慣れない言葉だが、地球温暖化をもたらす現代産業社会のジレンマを打開する環境キーワードとして注目されている。排出される廃棄物(エミッション)を再資源化していく循環システムの構築で、社会から廃棄物自体をなくそうという構想だ。すでに、ごみゼロ工場や生ごみのたい肥化など、各地で住民や行政、企業による取り組みが始まっている。関西での試みを報告し、ゼロエミッションの可能性を考えたい。

廃棄物を再び資源に

 関西学術研究都市の一角、京都府相楽郡木津町。今年四月から二つの集合住宅の住民たちが、家庭から出る生ごみでたい肥を作っている。たい肥は農家が引き取って、そのたい肥で野菜を栽培。その野菜は集合住宅の住民たちに安価で販売される。調理された野菜のくずは、再びたい肥になり、そして…。

 「ここでは、生ごみは資源になる。この小さな循環の輪に、ごみはないんですね」と木津町リサイクル研修ステーションの木村和彦主事は話す。

写真
木村主事が取り出したのは大型生ごみ処理場で作ったたい肥。元々は学校給食から回収した生ごみだ(京都府相楽郡木津町の木津町リサイクル研修ステーション)
 木津町は、一九九五年に建設省から「エコ・シティー」の指定を受け、リサイクル研修ステーションを中心にさまざまな環境事業を進めている。事業の基本コンセプトの中にゼロエミッションを掲げており、具体的な試みの一つとして、先の集合住宅へのたい肥を作る大型生ごみ処理機の導入がある。

 木村主事は「ごみがどこかで処理されるのではなくて、住民の目に見える所で資源化される。それが大切。近くに農家がまだまだある、この地域の特性も生きました」と喜ぶ。かつて京の町家と近郊農家の間で、下肥と野菜を相互に供給し合っていた循環の関係が、現代に復活したような格好だ。

 ゼロエミッションの取り組みは企業が先行しており、ビールや酒造、化学、自動車、機械などの工場で、リサイクル率を高めたり、ごみゼロを達成したりしている。

 一方で地域の動きも出てきている。鹿児島県・屋久島のゼロエミッション構想のほか、神奈川県川崎市や福岡県北九州市のゼロエミッション工業団地など、自治体と地域住民、企業による挑戦が始まっている。

 十一月二十三日、大阪市西区の大阪YMCA会館で、第一回ゼロエミッション・関西フォーラム(主催・地球ネットワーク会議など)が開かれ、近畿各地で環境問題に取り組む市民グループや自治体、企業、商店街などから七十人余が集まった。

 活動報告で、神戸市の生協コープこうべは、たい肥生産施設と農園を建設、店から出る生ごみをたい肥にして、野菜を栽培、店頭で販売する取り組みを紹介した。大阪市のアメリカ村では、若者たちが読み捨てた膨大な量の漫画雑誌を資源に、床や柱などの建材を製造、商品として販売している。滋賀県愛東町は、廃食油を公用車の燃料にしているが、昨年からは菜の花を栽培し、菜種油を燃料にする試みを始めている。

 発言者からは「生ごみをトラックで回収するため、エネルギーやコストがかかる」「経済システムに取り入れられるのか…」など、ゼロエミッションに向けての課題も出た。

 基調講演で内藤正明京都大教授は、コスト・エネルギー・経済などの問題点を挙げた上で、ゼロエミッションを実現するには▽自然生態系を模倣した相互に生かし合う社会システム▽太陽エネルギーに依存▽自然条件との共進化−が求められるとして、「これまでと根本的に原理が異なる循環共生社会の実現を、歴史上初めてやろうとしている」と意義を示した。

 このフォーラムを仕掛けた地球ネットワーク会議の吉村元男代表は、最後に関西ゼロエミッション連合の設立を宣言し、参加を呼び掛けた。

 「大量生産、大量消費、大量廃棄の産業社会ではなく、ゼロエミッションは地 域の中で資源が循環する社会。関西は多くの小盆地の中に歴史文化や個性のある都市群があり、循環型社会を築くのに適している。二十一世紀のビジネスチャンスでもあり、関西復権にもつながる」と力説した。

 自然の中に、ごみはないという。ゼロエミッションは、人と自然との関係をあらためて考えさせる。(1999年12月9日掲載)

 ▽ゼロエミッション 一九九四年に国連大学(本部・東京)の顧問、グンタ・パウリが提唱した。産業から排出される廃棄物を、別の産業の原料に使って製造、さらにその廃棄物を別の産業の原料に使う…といった循環を作り出すことで廃棄物をゼロにするシステム。産業集団だけでなく、地域、住民、行政を結んだ地域ゼロエミッションへの取り組みが屋久島や北九州市などで始まっている。


◇INDEX◇