Kyoto Shimbun


環境を考える
温暖化防止

 三年前の地球温暖化防止京都会議で採択された「京都議定書」をめぐる国際交渉が、大詰めを迎えている。京都議定書は、先進国に二酸化炭素(CO2)などの排出削減を義務づけたが、排出量の計算方法や「排出量取引」などの仕組みが具体的に決まっておらず、京都議定書は未完成の状態だ。今年十一月、オランダ・ハーグで開かれるハーグ会議は、議定書を完成させる「期限」となっているが、各国の利害対立は激しく、交渉の行方は予断を許さない。環境保護団体は「議定書が抜け穴だらけの妥協の産物になれば、温暖化を止められなくなる」と危機感を募らせている。

京都議定書の骨抜き懸念

 京都議定書をめぐる交渉の主な課題は、現在、三つある。その一つは「排出量取引」に上限を設けるかどうかだ。

 排出量取引とは、削減目標を達成できそうにない国が、目標以上に削減を達成できた他国から、排出する権利を買い取ることができる制度だ。

 例えば、日本の場合、二〇〇八〜一二年に、一九九〇年比六%、CO2換算で二千百万トン以上の排出削減が義務づけられている。仮に千五百万トンしか削減できなかった場合でも、排出量取引制度を利用し、六百万トン分の排出権をロシアなどから買い取れば、目標を達成できたことになる。

 この制度の問題は、カネにまかせて他国から排出権を買い取り、国内での排出削減努力を怠る国が現れるおそれがあること。「無制限に認めると、温暖化対策を遅らせることになる」と、ヨーロッパ諸国が上限設定を主張する。一方で日米は「市場原理に反する」と無制限を求め、両者の言い分は平行線のままだ。

 二つめの課題は、森林などによるCO2の吸収・排出を、どう算入するか。京都会議で活躍した環境団体・気候ネットワーク(京都市中京区)は「京都議定書を台無しにする最も危険な抜け穴」と警戒する。

 京都議定書では「新規植林」「再植林」「森林伐採」に限って算入できるが、科学的に正確な計算が難しいうえ、定義のあいまいさが火種となっている。

 懸念されるのは、解釈次第で、原生林を伐採し再植林すれば、CO2の吸収(つまり排出削減)とみなされかねないことだ。温暖化防止を名目に、世界各地で森林破壊が加速する事態さえ想定される。

 気候ネットワークは、こうした「危険な拡大解釈」を目論む急先ぽうが、京都会議の開催国日本だと指摘する。政府の見積もりでは、日本の排出削減六%のうち、省エネなどによるCO2の排出削減はゼロで、三・七%分を森林などの吸収で達成するとしているが、実際に吸収が見込めるのは〇・三%分に過ぎない。

 「残りの三・四%分は、議定書の拡大解釈で『削減したこと』にしようと、政府は躍起になっている。日本企業が海外で熱帯林を破壊しても、植林さえすれば『排出削減』になるという、とんでもないことが起きかねない」。同ネットの平田仁子さんは批判する。

 さらに議定書交渉では、削減目標を達成できなかった国への罰則についても、意見が割れている。

 京都会議以降、アルゼンチンやドイツで開かれた会議では、地球環境を守ろうという熱気は冷め、温暖化対策をビジネスチャンスに結びつけようと狙う産業界の関係者が目立った。

 ハーグ会議まであと三カ月。九月にはフランス・リヨンで、ハーグへの地ならしとなる特別会合が開かれる。京都会議を成功させた「地球と未来世代のために」という熱意を、世界各国はもう一度取り戻せるだろうか。(2000年8月11日掲載)


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