Kyoto Shimbun


環境を考える
ケナフ栽培ブーム

 「環境にやさしい植物」としてケナフを栽培する活動が盛んだ。木材を使わない紙の原料だが、地球温暖化の原因となる二酸化炭素を効率よく吸収するとして「地球環境の救世主」のようなイメージも広がっている。だが、外来植物の栽培を安易に広げることで生態系を破壊すると、影響を心配する声も出てきた。

自然を考える入り口

 九州大理学部の矢原徹一教授(生態学)は「外来種のケナフを、在来の植生が残る川原や野山に植えるのは論外」と痛烈に批判する。二酸化炭素を削減するとの期待に対しても、「削減量で比べれば、草のケナフより、樹木の方が多いのは明らか」と指摘する。

 ケナフは西アフリカ原産の一年草で麻の一種。半年で高さ二〜四メートルに育ち、茎から採れる繊維で袋や紙が作られている。

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大阪ガス京滋事業本部の敷地に、今年6月に植えられた約800本のケナフは、2メートルほどに成長し花を咲かせている (京都市下京区)
 国内では、十年ほど前から非木材紙の原料として注目を集めるようになった。同時に、二酸化炭素の吸収率が高いので地球温暖化防止に役立ち、さらに水質浄化にも効果がある−と受け止められ、栽培が急速に広まった。

 ケナフは地球環境問題を解決する万能植物−そんな過大評価も聞かれるようになり、危ぐする声も出てきた。

 最も問題視されているのは、生態系への影響だ。動植物の研究者らは、安易にケナフ栽培が広がり、河川敷など管理の行き届かない土地でケナフが増えれば、小動物の住みかが奪われると警鐘を鳴らす。

 本来は地域特有の生態系に触れるためにつくるビオトープに、外来種ケナフを植える動きもあり、批判が集まる。米国でケナフが帰化したとして、ケナフの野生化を懸念する意見もある。

 また、ケナフを木材に代わる紙資源とする考えにも、日本製紙連合会(東京都中央区)は「ケナフは製紙コストが高く、商品として普及するには課題が多い」と反発する。

 こうした批判、不安に対して、普及する側のケナフ協議会の稲垣寛会長(神戸女子大名誉教授)は「ケナフの植生の歴史が長い米国や中国で、セイタカアワダチソウのように帰化していない。種が取りにくく、日本で普及しているケナフは発芽力が弱く、広がる心配はない」と帰化への不安を打ち消す。

 また、ケナフは栽培植物であることを強調し、「茎の芯は油の吸収力に優れ、繊維は建材や衣料にも有効。商品開発を進める価値は十分にある」と主張する。

 ケナフ論争が出てきた中で、環境教育に盛んに使ってきた学校現場では、「ケナフをもてはやすだけではいけない」と見直すところも出てきた。市民にケナフの種を配布している大阪ガス京滋事業本部も「ケナフは環境を考える入り口」とブームと一線を画す。

 京都教育大付属桃山中(伏見区)では、栄養分によるケナフの成長の違いや、水質浄化の効果などを、生徒たちが調査している。前園律子教諭は「研究の経過を大切に、ケナフは環境にやさしいのか、各自が意見を持つように取り組んでいる」と多角的な分析を心がけている。

 京都市内を中心に学校などでケナフ普及に取り組む「京都ケナフネットワーク」の山田宏行さん(西陣青年の家職員)は、学校がケナフを栽培し過ぎて焼却処分するという、環境面でいえば本末転倒な例もみている。

 「はがき数枚作るなら、ケナフ一本分あれば十分。ケナフは環境を考えるきっかけ。栽培などの体験から、紙の無駄使いなど身近な問題を見つける。さらに森林保護などに関心を広げ、一つずつ関連させて地球問題を考える姿勢を育てることが大切」と山田さんは訴えている。(2000年9月8日掲載)


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