Kyoto Shimbun


環境を考える
田んぼにやさしく

持続可能な農業として「精密農業」が近年、注目を集めている。農薬や肥料の投入を低く抑えて土壌汚染を防ぎながら、収量拡大を目指す。京都でも、京都大や京都府、地元ハイテク企業などが、実用化への本格的な研究を進めている。環境にやさしい次世代農業に向けた試みをリポートする。

「精密農業」が注目される

 「土壌の栄養状態と収穫量が、同じ田んぼでも場所によって大きく違う」。大阪府高槻市の京都大大学院付属農場で、春を待つ田んぼを前に、梅田幹雄教授(地域環境科学)は強調する。

 梅田教授の研究室は一九九七年から、この農場で精密農業の実験を続けている。昨年は、〇・五ヘクタールの水田を二つに区分し、半分はさらに五メートル×十メートルの百区画に分け土壌を採取。区画ごとの窒素量やイネの生育度合いを最新のセンサーで分析し、それに合わせて肥料を適量だけ投入する可変施肥を行う一方、田んぼの残り半分では全体にまんべんなく肥料をまいた。

写真
土壌センサーやGPSを搭載した精密農業の実験用トラクター

 その結果、可変施肥を行った部分は、全体の肥料投入量を約一割削減したにもかかわらず、まんべんなく肥料をまいた部分より収穫量が多かった。

 イネの収量は、出穂期の適量な窒素肥料で決まるが、過剰な窒素は逆に収量やコメの味を落とすばかりでなく、土壌や河川を汚染する。梅田教授は「土壌がもろい米国では、過剰施肥による地下水汚染が早くから深刻になっている。環境に対して極力負荷をかけないで収益を向上させるためには、土壌の状況を精密に把握した農業経営が不可欠」と説く。

 制御機器メーカーのオムロン(本社・京都市下京区)は、精密農業のかぎを握る高性能な土壌センサーの開発に東京農工大と共同で取り組んでいる。同センサーは、土の中に光りを照射し、物質によって違う光の反射率や吸収率をもとに土壌中の栄養分の量などを分析する。その情報を、人工衛星のGPS(地上位置情報システム)の情報と組み合わせることで、ほ場の土壌状況の地図を瞬時に作成する装置だ。

 東京農工大の実験農場でテストを繰り返し、現在は実用一歩手前の段階。来年度は本格的な実用化に向けた実験に入る予定で、同社中央研究所の山崎喜造担当部長は「従来の分析のように土壌サンプルを研究所に持ち込むことなく、リアルタイムで計測できるようにすれば、農家の仕事の合理化にもつながる」と話す。

 生産農家も精密農業の研究に注目する。五ヘクタールの農地でコメや野菜を作る伏見区の生産農家山田豪男さんは「農業後継者が減る中で、日本の食料自給率をこれ以上下げないためには、大規模化が必要。精密農業なら大規模化と低農薬、低化学肥料の農業が両立できる」と期待する。四月から水田や野菜畑を、梅田教授らの実験場として提供する予定だ。

 「食料の世紀」といわれる二十一世紀。世界の人口が六十億人を超えたが、地球温暖化やオゾン層破壊など環境破壊が食料生産に深刻な影響を与えると予測する研究者は少なくない。日本の食料輸入は増加を続け年間三千万トンを超える。

 梅田教授は「食料輸入は土壌栄養分の海外からの移転。それが日本では過剰な廃棄物として、輸出元では土壌の枯渇として問題を引き起こす。精密農業による国内食料の生産効率アップは、地球規模の環境問題への対処にもつながる」と話している。(2001年3月9日掲載)


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