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Kyoto Shimbun 野生動物 里山で急増
人間と動物の共存を地道に探る 各地で被害が目立ちはじめたのは一九九〇年代半ばごろ。山沿いの田畑の稲、サツマイモ、クリ、豆類などがイノシシに食い荒らされ、植林したばかりのスギやヒノキの新芽がシカにかじられる被害が続出し始めた。府内の最近の被害額は、シカだけで年間三億円(府の推定)という。
被害に悩む市町村は、山ぎわにフェンスや金網を張るなど対策に追われている。しかし、シカは高さ二メートルのさくを飛び越え、イノシシは巧妙にさくのすき間を通り抜けるため、決め手となっていない。
シカ急増の理由について、村上興正・京都大大学院理学研究科助手(動物生態学)は▽植林の増加▽天敵がいない▽猟師の減少−を挙げる。「植林したものの、手入れされていない山は、シカの格好のエサ場となる。しかも、かつて全国に二十五万人いた猟師は現在十五万に減り、高齢化している。撃たれる数が減れば、死亡率も下がる。増加は必然」という。 イノシシの生態に詳しい神崎伸夫・東京農工大教授は、過疎化と減反政策によって放棄され、荒れた水田が増加したことが、イノシシの増加と関係しているとみる。 「放棄された水田は自然の山菜や虫が豊富で、雑食性のイノシシにとって楽園。そこで繁殖し、さらに食べ物を求め、人口が減って『安全』になった里へ出てくる」と話す。 暖冬や夏の少雨化など気候変化も、個体数の増加を加速しているようだ。府鳥獣保護員の森方徹さん=福知山市掘=は「春に生まれたイノシシの子の多くが長梅雨などで病死するが、気象条件が良く、死亡率が低くなっているよう」とみる。 特産のクリや黒豆が、イノシシやシカの食害にあっている京都府瑞穂町では一昨年、地元の組合が野生イノシシを飼育して猪肉の安定供給を図る「瑞穂いのしし村」をオープン。同町農業公社は、シカ肉ジャーキーや猪肉ソーセージも開発した。担当者は「これで食害が減るわけではないが、動物にやられっぱなしでは…」と悔しさをにじませる。 京滋では、サルやカラス、ビーバーに似た外来種のヌートリアによる農作物被害も報告されている。一方、研究者によると、野ウサギやツキノワグマの生息数は、なお減っているという。 現在、シカは年一〇%の割合で増えているとみられ、府は昨年、保護管理計画を立て、生息数一万頭を目標に、年間約五千頭の本格的な捕獲作戦に乗りだした。 動物学者でつくる「日本オオカミ協会」(埼玉県)は、オオカミを山に復活させ生態系のバランスを回復させようと主張している。丸山直樹事務局長は「オオカミは田畑を荒らすシカやイノシシの天敵で、中世まで農村の守護神だった。オオカミの復活こそ、健全な生態系と農業保護を両立させる道」と話すが、実現はまだまだ遠そうだ。
村上助手は「自然の生態系をおかしくしたのは人間だが、もはや人為的な管理なくして生態系は守れなくなっている。研究を積み重ねて『野生』をよく知り、人間と動物の共存方法を地道に探るし かない」と語る。(2001年4月13日掲載)
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