Kyoto Shimbun


環境を考える
里地 再評価の動き

 エコロジカルな暮らしへの関心が高まるなか、日本の原風景ともいえる「里地」を見直す動きが活発化している。かつての農山村には、田んぼや里山を生かした循環型の暮らしがあり、多様な生き物が人と共生していた。環境保全だけでなく、地域おこしや都会ストレスの「いやし」、教育の面からも里地に注目が集まっている。


自然と人間の接点に

 新緑に包まれた滋賀県朽木村の生杉地区。四月下旬、京都市の市民団体「環境市民」が開いた里山市民学校の受講者ら約十五人が訪れた。

 安曇川上流の針畑川の土手には、さまざまな山野草が新芽を吹いていた。ヨモギ、フキノトウ、スギナ、カンゾウ…。里山はかつて、主要な燃料だった薪や炭の供給源であり、キノコや山菜などの食料源でもあった。

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里山を見学する参加者たち(4月25日、滋賀県朽木村)
 近くの家元たけさん(66)がタラの芽を一行に売りに来た。「今朝、取ったばかり。天ぷらにすればおいしいですよ」

 京都大の芦生演習林(京都府美山町)の東側に位置する西朽木の山々は標高五百メートルを超え、ブナ、トチノキ、芦生スギが混在する冷温帯独特の植生を形成している。

 現地で「杣(そま)の会」を主宰する今北哲也さん(55)の案内で、ほお谷と呼ばれる谷沿いの林道を歩く。同会は二十年前、山とのつながりを模索する都会の住民らが設立した。会員は百人を超え、山小屋と二十五ヘクタールの雑木山を持ち、炭焼きや自然教室などの活動をしている。

 戦後の拡大造林と減反田の林地転換で、林道沿いはスギ林ばかりが目につく。「スギの値段は一立方メートル当たり一万五千円ほどだが、切り出して運ぶ経費は二万円かかる。このスギをどうするのか」と、今北さんは考え込む。

 谷を奥に入ると、雑木林が現れる。里山として長く使われなかった結果、ブナやナラが大きく育ち、自然林に近い姿になっている。今北さんは「大きくなりすぎて、炭には使えない。柴を拾うくらいやね」。

 里山は、人が使うことによって維持される。しかし、戦後の燃料革命で、炭や薪は家庭用燃料の主役でなくなり、多くの里山が放置された。炭の一大産地だった朽木では、炭焼きのノウハウを次世代に引き継ぐことも難しくなっている。

 環境市民の能村聡さんは「人と自然の接点として里山を再生させるには、里山に『経済性』を見つけられるかがカギになる」と指摘する。

 三年前に設立された里地ネットワーク(事務局・東京)は、田んぼや里山を生かした循環型の地域社会づくりを支援している。事務局は「人間らしい暮らしを求めて、田舎暮らしをする人が増えている。教育や安らぎの場としても、里地はもってこい。経済性には乗らないが、里地の大切さを訴えたい」という。

 環境省が全国を山地、里地、平地、沿岸地域に分類したところ、里地は四八%もあった。しかし、市街地の拡大とバブル期のゴルフ場・リゾート開発で里地面積は減少傾向にある。

 二次的自然ともいえる里地は、ウサギやキツネ、ゲンゴロウ、ドジョウなど身近な生き物の宝庫だった。しかし、里地は荒廃し、メダカなどは絶滅危惧種に指定されるようになった。

 同ネット代表の内藤正明・京都大教授は、里地を生かした生活が、地球温暖化防止にもつながるとみる。「自然の循環を生かし、食べ物や燃料を自給すれば、廃棄物や二酸化炭素の排出を減らすことができる。まず、農山村を元気にすること」と、地球にやさしい村づくりを提唱している。(2001年5月11日掲載)


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