Kyoto Shimbun


環境を考える
ブラックバス勢力拡大

 琵琶湖をはじめ全国の湖、河川に生息し、在来の魚類を食い荒らす外来魚ブラックバス。滋賀県などほとんどの都道府県で放流が禁止されているにもかかわらず勢力域は拡大し、長い時間をかけて生物たちが形づくってきた生態系を危うくさせている。バス釣り熱は高まるばかりだが、このままでいいのだろうか。


釣り人気の一方 生態系が危機に

 江戸時代の水運の面影をとどめる京都市中京区〜船入町の高瀬川。今年三月、川のしゅんせつ工事に伴い、川魚を特設のいけすに移す捕獲作戦が行われた。網には地元の人たちが放流してきたニシキゴイ、フナ、カメだけでなく、ブラックバスやブルーギルの姿が踊った。

写真
淡水域の生物環境に影響を及ぼすブラックバス
 「琵琶湖ならともなく、身近な高瀬川にもブラックバスが増えているとは」と、銅駝高瀬川保存会副会長の山森好雄さん(80)は驚いた。

 ブラックバスは北米原産。日本では一九二五年、釣りが好きな実業家が神奈川県の芦ノ湖に初めて放流した。全国内水面漁業共同組合連合会(全内漁連)によると、六〇年代までは生息水域は神奈川、山梨などの五県に過ぎなかったという。しかし、七〇年代に入ってから全国各地に拡大していった。

 琵琶湖で初めて見つかったのは、一九七四年。今では、モロコやニゴロブナなどは激減し、一方でブラックバスは「琵琶湖で最も幅をきかす魚」(滋賀県立琵琶湖博物館の中井克樹主任学芸員)となっている。

 ブラックバスの最大の問題は、在来の小型魚類を大量に食べ、既存の生態系を破壊してしまうことだ。近畿大水産学科の細谷和海教授(魚類学)らの実験では、一匹のブラックバスが一か月半の間に食べるモツゴ(メダカに似た淡水魚)は二百五十五匹にもなるという結果が出た。

 京都市左京区の深泥池。氷河時代の名残とされる独特の生物群集で知られる。やはり七〇年代、何者かにブラックバスを放流された。深泥池水生動物研究会(代表世話人・竹門康弘大阪府立大助教授)の調査では、過去二十年間でカワバタモロコやシロヒレタビラなど六種の在来魚が姿を消したという。

 なぜブラックバスは急激に増えたのか。生命力の強さに加えて、多くの研究者が指摘するのが、釣ったブラックバスを再び湖や川に戻す「キャッチ・アンド・リリース」という方法だ。今年二月、東京都内で開かれたシンポジウム「ブラックバス問題を考える」でも、キャッチ・アンド・リリースの是非が議論となった。

 釣り具業界でつくる日本釣振興会(日釣振)は、キャッチ・アンド・リリースを「生命の尊厳や資源保護の意味で必要」と主張した。日釣振によると、ブラックバス釣り人口は約三百万人、ルアーなどブラックバス釣り具の売上高は年間六百億円以上に上る。釣り産業振興のためには、資源(ブラックバス)の維持が不可欠というわけだ。

 これに対し、ブラックバスの駆除を訴える漁業者や自然保護団体は「キャッチ・アンド・リリースはブラックバスの拡大再生産の手法で、密放流の温床」と厳しく批判する。

 ブラックバスは、生態系を危うくさせるだけではない。漁業者たちが資金を投じて養殖、放流したアユなどの稚魚も食べてしまう。漁業者にとって、釣り目的のブラックバスの再放流は、生活の糧を奪う行為に等しい。内水漁連の佐藤稔専務理事は「ブラックバス釣りは密漁」と語気を強める。(2001年6月15日掲載)


◇INDEX◇