Kyoto Shimbun


環境を考える
森林破壊で滅びた楽園

 無限の宇宙にぽつんと浮かぶ地球はここ100年、森林やオゾン層の破壊、水や空気の汚染など深刻な問題を生んだ。環境への大きな負担は人類の存続を脅かす。10年前、世界の国々はリオデジャネイロで地球サミットを開いた。そして今年9月、ヨハネスブルクに各国が集まる。だが、取り組みは十分でない。繁栄をおう歌する社会が資源に限りがあることを忘れたら−。イースター島に立つ神秘な石像群がその悲しい結末を知っている。

悲しい結末知るモアイ

 溶岩が散らばる荒涼とした草原。海を望み、大石像がすっくと立つ。長い顔に太い鼻。固く結んだ薄い唇。こけむした黒塊が不思議な存在感を漂わす。かつてここに住む人々はこれらの像を現地語で「存在するもの」を意味する「モアイ」と名付けた。

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荒涼とした草原に立つモアイの石像。森林破壊に続く食糧争奪をめぐる部族間抗争で石像は倒され、文明は滅んだ(チリ・イースター島)
 南太平洋の東端に浮かぶチリのイースター島。車で1周しても1時間ほどだ。絶海の孤島は約1000年前から400年前までの間、900体近いモアイの像を建てる文明を築きながら、環境破壊が元で衰退した歴史を持つ。

 島の人口は現在3800人ほどだ。島の9割以上は牛と馬が草をはむ荒れた放牧地だ。

 島が初めて世界に紹介されたのは18世紀。オランダ人提督ロッゲフェーンが1722年に西洋人として初めて訪れて以来、なぞの石像が点在する神秘な島として注目を集めてきた。当時の人口は2000人。貧しくやせこけた人々が石像文明を築いたとは信じられなかったからだ。

 「かつて島はヤシの森林に覆われていたことが最近の花粉の研究で分かった」。こう話すのは島の研究史に詳しい米カリフォルニア大ロサンゼルス校医学部のジャレド・ダイアモンド博士だ。  森林だけではない。古代のごみ捨て場からはイルカやマグロをはじめ、25種類の海鳥の骨も見つかった。「昔は楽園のような生活だったらしい」。今いる海鳥は1種類だけだ。

 「しかし17世紀には完全に森林が消滅していた。ごみ捨て場ではイルカの骨の代わりに人骨が交じるようになった」と博士は説明する。

 何があったのか。島の考古学者、セルジオ・ラプ氏は「だれもいない島に五世紀ごろに舟でたどり着いた先祖は、タロイモやバナナの畑を開拓するために森林を切り開いていった。文明も栄え、食料は増え、人口は16世紀には、2万人を超えたと思う。でもこの島のヤシは成長が遅い。伐採の速さに森林の回復が追いつかなかった」。木が減るとともに土壌はやせていった。

 「土地がやせると食料生産性が落ちた。木の舟で沖にもこぎ出せず魚も捕れない。17世紀には肉への渇望から食人までするようになった」。森林を破壊しつくした時、モアイの文明は滅びた。

 威厳に満ちたモアイ像は、森林破壊の後に起きた食料争奪のための部族間の争いで倒されていった。倒壊でなくなったのか、小さな赤い溶岩と白いサンゴでできた目は失われてしまった。

 我に返り、宇宙の孤島、地球に思いをはせる。資源の収奪、人口爆発、生物種の絶滅。われわれはどれほど地球の未来が見えているのだろう。(2002年1月11日掲載)


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