Kyoto Shimbun


環境を考える
捕鯨と反捕鯨、溝深まるばかり

 5月下旬、国際捕鯨委員会(IWC)の総会が山口県下関市で開かれた。IWCは現在、商業捕鯨を全面中止しているが、日本は「一部のクジラの頭数は回復している」として捕鯨再開を主張する。一方、欧米の「反捕鯨国」や環境団体はクジラの全面保護を求めている。1993年の京都会議以来、9年ぶりの日本開催となった下関会議でも両者は再び激突、溝は深まるばかりだ。

日本の暫定枠案を否決
「再開」に根強い不信

 有史以来、世界各地に捕鯨の記録が残るが、本格的な捕鯨は動力船と捕鯨砲が開発された19世紀後半に始まった。鯨油や肉を求め、英国やノルウェー、ロシア、日本などが南極海で激しい乱獲を行った。多くのクジラが激減し、中でも20万頭いた大型のシロナガスクジラは2000頭に減ってしまった。

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北西太平洋での日本の調査捕鯨で捕獲されたニタリクジラ(日本鯨類研究所提供)
 クジラ激減と世界的な環境意識の高まりを背景に「クジラの全面保護」を掲げる欧米諸国がIWCで多数派となり、1982年に商業捕鯨中止を決議、94年には南極海がクジラの聖域(サンクチュアリー)になった。

 ところが、日本などの調査で南極海や北太平洋で小型のミンククジラが増えていることが判明した。水産庁の小松正之参事官(捕鯨担当)は「増え過ぎたミンククジラがえさのオキアミなどを大量に食べ、シロナガスなど大型クジラの回復を妨げている。ミンクの間引きが必要」と主張する。

 下関会議で、日本は海洋資源の持続的利用と捕鯨文化の保持を掲げ、ミンク50頭の捕獲を「暫定救済枠」として要求した。しかし、日本案は「反捕鯨国」の反対多数で否決された。報復措置として日本は、これまで北極圏のイヌイットなどに特例的に認められてきた「原住民生存捕鯨」枠の反対に回り、否決に導いた。

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南極海の主なクジラと推定生息数
 水産庁幹部は「クジラ保護の感情論が支配的なIWCでは、科学的な議論ができない。自国の先住民には希少なクジラの捕獲を許し、他国には十分な数がいるミンクの捕獲を認めない−という欧米のダブルスタンダード(二枚舌)への抗議だ」と声を荒げる。

 一方、国際環境団体グリーンピースは「『捕鯨から保鯨へ』が世界の潮流。捕鯨再開は密猟や乱獲を招き、クジラを再び危機に追いやる。日本はIWC加盟の発展途上国の票をODA(政府開発援助)で買いあさっている」と厳しく批判する。

 日本の環境保護団体メンバーも「日本は戦後、膨大な数のクジラを企業のカネもうけのために殺した。今さら科学、科学と言っても、また商業捕鯨をやるための方便にしか聞こえない」と根強い不信感を打ち明ける。

 日本は、象牙(ぞうげ)やべっ甲など野生生物の「輸入大国」として非難を浴びてきた過去がある。IWCでの捕鯨論争が感情的な対立に陥っている感は否めないが、深い反省の上に立った主張でなければ、世界の世論を動かすことはできないだろう。(2002年6月21日掲載)

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