Kyoto Shimbun


環境を考える
長江の固有種救え

 チベット高原に源を発し、東シナ海に注ぐ全長約6400キロに及ぶ長江(揚子江)は、古来から人類をはじめ、魚類や鳥類など、さまざまな生き物をはぐくんできた。しかし、流域の急激な経済発展は、長江の水質悪化をもたらした。中流域の湖北省では世界一の発電量を誇る三峡(さんきょう)ダムの建設が急ピッチで進み、流域の生き物の周辺環境に暗い影を落としている。中国の国家一級保護動物で、長江固有の生物である中華チョウザメとヨウスコウカワイルカを通して、中国の動物保護の現状を見る。

経済発展で水質悪化
ダム建設も陰落とす

中華チョウザメ 順調に稚魚放流

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中華チョウザメをデザインした切手
 長江のほとりに建つ中華●研究所(湖北省宜昌市)。空調の効いた展示室に入ると、直径10数メートルのだ円形プールが目に飛び込んできた。

 「これが中華チョウザメです。最大で体長4.5メートル、体重500キロ以上になります」。易継舫研究所長(42)が指指す先で2匹の黒い魚体がゆったりと泳いでいた。静かにエラを動かし呼吸する姿は神秘的だ。地元では「生きた化石」と呼ぶ。

 研究所は1982年、宜昌市内の長江で始まったダムの建設に合わせて設置された。長江上流で産卵し、中国近海で成長する中華チョウザメが、ダムによる回遊路分断で絶滅するのを防ぐためだ。

 これまでに、中華チョウザメの人工産卵に成功したほか、毎年、何万匹もの稚魚を長江に放流している。易所長は「中華チョウザメは、乱獲や水質の悪化で絶滅危ぐ種になった。だが、かつて放流した稚魚は、成長して宜昌市まで戻ってきている」といい、「DNAや標識調査にも取り組みたい」と意気込む。

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水槽の中を泳ぎ回る中華チョウザ(中国湖北省宜昌市・中華●研究所)
 保護活動は成果を上げているが、宜昌市上流で進む三峡ダム建設は、研究者たちの心配の種だ。易所長は「チョウザメは水温や砂の量に敏感。より良い生息環境づくりを研究中だが今後、環境が良くなる可能性は低い」と表情を曇らせた。

ヨウスコウカワイルカ 激減、捕獲も困難に

 一方、水質汚染や船のスクリュー巻き込み事故などで生息数が減少しているヨウスコウカワイルカの保護活動は、思うように進んでいない。

 今年7月には、世界で唯一、人工飼育していたオスの「チチ」が死亡した。チチは、1980年に長江で捕獲された後、湖北省武漢市の中国科学院水生生物研究所で飼育されてきた。日本の研究機関も、資金や施設面で支援をしてきた。

 国際海洋生物研究所「カワイルカ保護協議会」(事務局・千葉県鴨川市)は、89年から中国の研究者を招いてシンポジウムを開いたり、資金協力をしてきた。事務局の荒井一利さん(47)=鴨川シーワールド海獣展示課長=は「チチの死亡は研究に痛手だ。新たにカワイルカを捕獲しても、人工飼育に慣れさせるには長い時間がかかる」と指摘し、「カワイルカの数が減りすぎて、人工飼育しようにも捕獲できないのが現状だ」と話す。

 中国政府は、2001年から50年間で、ジャイアントパンダやトキなどの野生動物を保護し、合わせて保護区を建設するプロジェクトを展開している。しかし、経済発展と環境保護の両立は簡単なことではない。水質汚染や動物の絶滅など、先進国がすでに経験した出来事は、中国でも発生する可能性がある。「発展の著しい中国でも長江流域は特に近代化が進んでいるようだ。中国には先進国を反面教師にしてほしい」。荒井さんはこう願っている。(2002年9月13日掲載)

 注=●は魚へんに尋の文字


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