Kyoto Shimbun


環境を考える
道路沿線に高まる懸念

 ディーゼル車の排気ガスに含まれる「ディーゼル排気粒子(DEP)」への対策が各方面で進んでいる。環境省の検討会は今年3月、DEPの発がん性を明記する報告書をまとめたが、心配される道路沿線住民への健康影響については「データが不十分」として、結論が出ていない。環境中のDEPの実態把握は急務で、国立環境研究所や京都府保健環境研究所など各地の研究所で調査が進められている。(社会報道部稲庭篤)

ディーゼル排気粒子
リスクの解明が急務

 DEPは、ベンゾピレンなど発がん性物質を含むうえ、多くが粒径約0.1−0.3マイクロメートル(マイクロメートルは1000分の1ミリ)と非常に小さく、肺の奥まで届いて沈着するため、ぜんそくや肺がんの原因になると心配されている。

 日本はディーゼル車が多く、また幹線道路の近くまで住宅が密集しているため、欧米よりもDEPの影響は深刻との指摘もある。一昨年、国と原告住民が和解した尼崎公害訴訟では、DEPの健康影響が認定された。

 国は自動車窒素酸化物法を改正し、今年10月から「大阪・兵庫圏」など大都市圏でのディーゼル車の登録制限を行った。東京都などは粒子除去装置の装着を義務付けるさらに厳しい条例を来年10月に施行するなど排出規制が進んでいる。

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ディーゼル排気粒子の調査を行った自動車排ガス測定局(京都府大山崎町・国道171号)
 しかし、環境省の調査によるとDEPなど大気中の「浮遊粒子状物質」は緩やかな減少傾向を見せるが、なかなか改善されていない。昨年度は全国3分の1の測定局で環境基準を上回り、京都府内でも南区の国道1号沿いは未達成だった。

 長期的な健康への影響が心配されるため、環境省は「ディーゼル排気微粒子リスク評価検討会」でDEPをリスク(危険度)評価した。報告書は幹線道路沿線などDEPを大量に吸い込む環境で肺がんのリスクは2割から5割増すと指摘する。一方、慢性気管支炎やぜんそくなどの呼吸器疾患との関連を示唆する研究はあるが、沿線でのDEP濃度などのデータが不十分だとして、「寄与の割合は必ずしも明らかでない」とし、住民が吸い込むDEPの量を調べるなど詳細なデータ収集の必要性を強調した。

 現状の排出対策で果たして十分なのか。より正確なリスク評価に向け、DEPの実態調査が始まっている。

 京都府保健環境研の日置正主任研究員は、テフロン製テープろ紙を用いて粒子状物質を粒径別に連続採取し分析する手法を開発した。従来の手法では6−24時間平均というおおまかな値だったが、1時間ごとにDEPなど粒子状物質の増減や成分データを得られるという。

 国道171号自動車排ガス測定局(大山崎町)で調べたところ、DEPの寄与が大きいベンゾピレンなどの濃度は自動車走行量の多い午後4時から同11時に高濃度になった。日置主任研究員は「1時間ごとのデータが得られているので、気象や交通量などのデータと合わせれば、環境中のDEPの実態解明につながる。調査はまだまだこれからで、各地でデータを積み上げていくことが大切」と話す。

 3年後には大都市圏だけでなく全国でディーゼル車の排気ガスが欧州連合並みのレベルまで規制される見込みだ。環境省検討会のワーキンググループの座長を務めた内山巌雄京都大教授(環境保健学)は「今後の研究でリスクがさらに高くなれば、さらに厳しい規制が必要になる。ディーゼル車だけでなく、ガソリン車からも、さらに微小な有害粒子が排出するという研究もある。排気ガス対策はこれで終わりではない」と強調する。(2002年10月11日掲載)


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