Kyoto Shimbun


環境を考える
冬越え増殖 外来種

 都会の空を覆う鮮やかな緑色のインコ、強力なあごと鋭い歯を持つ大型のワニ魚−。世界中から日本国内に持ち込まれた外来種(移入種)は動植物合わせて2200種を超え、全国に定着、増殖し続けている。温暖化、ヒートアイランド現象など気候条件の変化も手伝い、都市部で越冬する熱帯の生物も珍しくない。
 捨てられたペット、養殖事業の挫折など、さまざまな事情で野に放たれたエイリアンたち。私たちが見慣れたはずの森や川、湖では今、かつて経験したこともない急激な変化に「先住」の生き物たちが悲鳴を上げている。

2232種、固有生態系を破壊
輸入、放流 日本は「無法地帯」

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 アライグマ、ブラックバス、タイワンザル…。人間の手によって海外から移入された外来種が固有の生態系を乱すケースが急増している。

 外来種は、ときに農林漁業に深刻な被害を与え、新たな病原生物やウイルスを運び込み、花粉症を引き起こすなど、人間の生活も脅かす。近所の川や裏山で愛らしい「新顔」を見かけても、喜んではいられない。

 日本生態学会は昨年秋、2232種もの外来種リストを掲載したハンドブックをまとめ、生態系への影響を考慮した法規制がほとんどないまま大量の野生生物を輸入している日本の現状を「無法地帯」と厳しく批判した。

 一時的な確認にとどまっている「定着未確認種」のリストには熱帯性のピラニアやイグアナ、ニシキヘビといった顔も並ぶ。

 地球平均の3倍以上のスピードで温暖化が進む日本の大都市、冬でも温かい工場排水が流れる用水路…。生活に適した環境があれば、彼らでさえ冬を越し、定着する恐れがあるのだ。

ガー侵入で「悲劇」を連想
3mの肉食魚、新帝王に?

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国内の河川や湖沼で確認が相次いでいる北米産のガーパイク(草津市・滋賀県立琵琶湖博物館)

 体長3メートルのワニ魚がコイやフナを丸のみする−。信じられないような話が将来、現実となりかねない。

 1997年の冬、滋賀県の琵琶湖南岸で、体長82センチのアリゲーターガーが漁網にかかった。ワニのように細長い口、鋭い歯。北米大陸を中心に分布するガーパイクの仲間でも特に大きく、成長すると3メートルにも達する。琵琶湖ではこの9年で10匹のガー類が確認されている。

 「温帯域原産の大型肉食魚の侵入が一番恐い。ガーは今後、琵琶湖にとって大きな脅威です」と、滋賀県水産試験場技師の大山明彦さん(29)は心配する。

 約50種類もの多様な魚類が共存していた琵琶湖の生態系は、80−90年代に爆発的に増えたブラックバスとブルーギルによって激変。今や湖の南部では漁網にかかる魚の9割以上は外来魚だ。

 同県立琵琶湖博物館の主任学芸員、中井克樹さん(41)は「今の琵琶湖の状況は『ビクトリア湖の悲劇』を連想させる」と嘆く。アフリカのビクトリア湖では、60年ごろに水産資源として放流した体長2メートルにもなるナイルパーチが80年代に爆発的に増殖。200種以上の小型魚類が10年足らずで姿を消す、という世界でも例のない生態系の崩壊を招いた。

 外来種の影響は時に人間の想像を超える。ブラックバスよりはるかに大きなガーが琵琶湖の主になる恐れもあるのだ。

 飼いきれずに放流する人が多いのか、全国でガーの確認例が増え続けている。それでも中井さんは「死なせたくないのは人情」と飼い主をかばう。「逃がす側のモラルのなさを責めるより、まず危険な生物を国内に入れない、流通させないことを徹底すべきなんです」(2003年1月11日掲載)


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