Kyoto Shimbun


環境を考える
ナラ枯れ被害京都府北部で深刻

 京都府北部の森林を中心に、ミズナラやコナラなどナラ類が集団で枯死する「ナラ枯れ」が問題になっている。被害は徐々に南下し、昨年は美山町の京都大芦生研究林で初めて確認された。特定の昆虫の繁殖によって引き起こされることが分かっているが、現時点では決定的な防除策はなく、関係者が研究を急いでいる。なぜ近年になって爆発的に発生したのか未解明で、「人が山に手を入れなくなったのが原因」という説も浮上している。(社会報道部目黒重幸)

決定的な防除策なく
京都市への拡大懸念

 京都府林業試験場(和知町)によると、ナラ枯れは戦前から確認されていたが、1990年代に入って全国的に急速に広がった。被害は昨年までに日本海側を中心に1府17県に及んでいる。

 京都府では、91年に久美浜町で初めて確認されて以降、90年代に丹後半島一帯に広がった。昨年までに美山町や京北町に南下し、京都市域への拡大も心配されている。

 同試験場は「現在の被害の中心地は綾部市や美山町のあたり。それより北部では、大きなミズナラがほとんどやられた」という。また「京都市内は大きなミズナラはないが、別のナラ類に被害が及ぶ恐れもある」と危ぐする。

 ▽森林機能低下も

 京大芦生研究林では昨年、約100本の枯れたミズナラが見つかった。前研究林長の中島皇京大フィールド科学教育研究センター講師は「今年はこれまでに約300本の被害が確認された。ミズナラは芦生の広葉樹の中心的な木だ。被害が広がれば、さまざまな影響が懸念される」という。

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枯れて葉が赤茶色に変色した京都大芦生研究林のミズナラ(9月3日、京都府美山町。山崎理正京大農学研究科助手撮影)
 具体的な悪影響として▽山の水源涵養機能の低下▽実を食べるツキノワグマなどの食料枯渇▽葉が赤茶けて立ち枯れることによる景観悪化−などが指摘されている。

 ▽原因は「ナラ菌」

 ナラ枯れを引き起こす昆虫は、カシノナガキクイムシ(体長約5ミリ)で、木に穴をあけて生活する。この昆虫がえさとして持ち込む「ナラ菌」が木の中で繁殖し、木の通水機能を停止させてしまうことが近年の研究で分かった。

 防除策として、ナラ菌の繁殖余地をなくすためにシイタケ菌を打ち込んで、昆虫を「兵糧攻め」にする方法などが研究されているが、「現時点では確立した予防や防除の方法がない」と中島講師はいう。発生のごく初期の段階なら被害木を切り出して殺虫することもできる。「火事と同じで、初期消火に失敗すると急速に拡大し、手がつけられなくなる」と府林業試験場はいう。

 ▽人の手入らず…

 最大の謎は、なぜ近年になってナラ枯れが爆発的に発生したのか、という点だ。まだはっきりしたことは分かっていないが▽酸性雨によって木が弱った▽温暖化の影響で本来は南方に住む虫が北上してきた−などの説が研究者から出ている。

 府林業試験所の小林正秀技師は「山に人が入らなくなったのが原因」と指摘する。この昆虫は、一定の太さの木でなければ繁殖できないことが確認されている。ミズナラやコナラは、かつては薪や炭として利用され、ある程度の太さになると伐採されていた。しかし燃料革命で山の木々が放置され、老齢の大木となったことで、虫の大発生の温床となった−という説だ。

 小林技師は「人間が、石油資源に支えられた便利で快適な生活を追い求めた結果が、このような形で現れているのではないか。ナラ枯れは、現代の生活スタイルの危うさと、森林育成の重要性を訴えている」と指摘している。(2003年11月14日掲載)


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