Kyoto Shimbun


環境を考える
自然との共生 根本問い直せ

 京都府丹波町の養鶏場で発生した鳥インフルエンザ問題は、私たちの「食」を取り巻く状況を考え直すきっかけになった。大量の鶏を超過密状態で飼育し、卵や鶏肉を工業製品のように出荷する養鶏が増えており、自然との共生という農業の本来の観点から「根本から問い直すべき」と指摘する声が出ている。養鶏の現場を取材し、「食」のあり方を考えた。(社会報道部 円城 得之)

鳥インフルエンザ問題
「食」再考のきっかけに

 京都府内のある採卵養鶏場。球型蛍光灯に照らされた鶏舎に入ると、4段のケージ(かご)が高さ2メートルまで積まれ、50mも伸びている。幅45cmのケージの中に、4羽の鶏がひしめき合い、羽が擦り切れた鶏も多い。エサは1日に4回、機械が鶏の前の溝に入れていく。フンはケージから落ち、鶏舎の下にたまる。生み落とした卵は、ケージからベルトコンベアに転がって運ばれ、次々と集められていく。

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ケージの中で大量の鶏が飼育されている鶏舎(京都府内)
 この鶏舎は「セミウインドレス」に近い型で、カーテン式の窓があって、自然の風も入る。と言っても、密閉状態に近く、光はあまり入らない。経営者は一人で数万羽を飼育しているという。

 「窓が一切なく、空気を強制的に送り込み、温度を自動調節するウインドレス鶏舎の業者も多い」と経営者は話す。「8段積みケージで、50cm幅に8羽を入れる業者もある」

 養鶏は大規模化し、効率化を続けている。背景にあるのは、鶏卵が数十年も低価格であり続け、「物価の優等生」と言わるいることがある。この経営者は「人件費を減らし、より効率よく卵を生ます必要がある。卵が低価格の中、コスト削減に業者は必死だ」と話す。エサも、安価な100%輸入の配合飼料だ。

 京都自給ネットワークの伊藤雅文代表は「鳥インフルエンザ問題を、大量生産型の養鶏のあり方を見直すきっかけにするべきだ」と提起する。「大規模型の過密飼いで、鶏はストレスが高まり、免疫力も弱まるのではないか。病気になれば一気に広がる」

 卵の国内自給率は重量ベースで96%(2002年度)。しかし、鶏の飼料は約90%を輸入に頼っており、これを差し引いて計算するカロリーベースの自給率だと、9%に激減する。伊藤代表は「食糧自給でも問題は多い」と指摘する。

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地面の上で動き回る「平飼い」の鶏舎(滋賀県栗東市荒張)
 滋賀県栗東市の養鶏業中辻正人さん(42)の鶏舎。網に囲まれた土の上で、数十羽の鶏が歩き回る。ケージを使わず「平飼い」と呼ばれる。開放型鶏舎で、網や天窓を通して日光が降り注ぐ。鶏は中央に置かれたエサ箱をついばみ、採卵箱の中に入って卵を生む。フンは地面に落ち、「鶏が歩き回って土とかきまぜるため、においはほとんどしない」という。

 約400羽を飼育しており、1坪に10羽の割合だ。中辻さんは「鶏も人間と同じで、適度な運動と新鮮な空気、太陽の光が必要。健康な鶏でないと健康な卵は生まない」。卵は1個40円と、一般の卵よりも割高だ。栗東市や草津市、守山市など近くの消費者に、自分で車を運転して配達している。

 エサは、米国産トウモロコシなどが中心だが、鶏舎周辺の草や野菜なども与えている。今秋からは、すべての飼料を滋賀県産に切り換えるという。「地域で飼料を調達し、地域で消費してもらう養鶏業でありたい」と話す。

 養鶏業に詳しい桜井倬治・京都府立大名誉教授(農業経済)は「鶏の詰め込み過ぎはいけない」と前置きして、こう指摘する。「ウインドレス鶏舎はフンやエサを管理できて、清潔だと言える。平飼いとウインドレスのどちらが健康、不健康と一概には言えない。放し飼いや平飼いをすべきという意見もあるが、飼育に要する面積や安い鶏卵価格を考えれば、現実的ではない」

 一方で、安全な農産物や環境問題に取り組む槌田劭・元京都精華大教授は「現在の養鶏は経済至上主義で、一方的に自然から奪い取るという発想に立っている。あらゆる生物の共生という環境問題解決の原点に立ち戻るべきだ」と指摘し、さらに問題提起する。「安全なものは適正な価格であるべきで、現状の卵価は安すぎる。消費者が変わらないと生産者は変わらない」(2004年4月13日掲載)


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