Kyoto Shimbun


環境を考える
COP10後、なお火種

地球温暖化防止に向けた気候変動枠組み条約第10回締約国会議(COP10)が昨年12月、アルゼンチンのブエノスアイレスで開かれた。条約に基づく京都議定書の発効を今年2月16日に控え、COP10は2013年からの温暖化対策をどのような国際制度で進めるかという「京都議定書以後(ポスト京都)」が最大の焦点となり、ポスト京都に向けた「セミナー」の開催合意にこぎ着けた。京都議定書の目標達成すら危ぶまれる現状のなか、ポスト京都がなぜ重要なのか。COP10の議論を通じて考える。(社会報道部 日比野敏陽)

「ポスト京都」利害衝突
温暖化防止策、途上国と先進国が激論

 「セミナーが途上国の二酸化炭素(CO2)排出削減に直結しないと明記すべきだ」(インド)「セミナーが途上国に対する新しい義務につながるなら我が国は参加しない」(ブラジル)。

 COP10最終日の全体会合で「セミナー」の開催議案が正式に提案されると、各国から議案の修正要求が相次ぎ、会合は紛糾した。修正案をめぐる非公式折衝を挟みながらの進行となり、COP10の閉会は結局、翌日の正午にずれ込んだ。

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COP10会場前では、アルゼンチンタンゴの演奏家が長靴を履いてバンドネオンの演奏を披露。「気候変動が進めば長靴だけでは足りない」と訴えた
 修正要求したのは発展途上の各国だ。「温暖化をもたらした歴史的責任は先進国にある。ポスト京都の議論を通じて途上国にも京都議定書のような削減義務を課すのは筋違いだ」(ブラジル)という従来からの主張が背景にある。

 人口の多い中国やインドなどのCO2の総排出量は世界有数で、経済成長に伴い増加している。京都議定書を否定している米国はこの点をとらえ「中国やインドが参加しない枠組みは実効性がない」(ハーラー・ワトソン米国務次官補)という主張を展開。ポスト京都に向けた「セミナー」の開催にも一時反対にまわるなど、ポスト京都には暗雲が立ちこめた。

 京都議定書の発効以前からポスト京都がなぜ重要なのか。「国別の排出削減義務など法的拘束力のある京都議定書の枠組みがポスト京都で引き継がれない場合、京都議定書の削減義務そのものが履行されず放置される可能性もある」(気候行動ネットワーク政策研究担当のマティアス・デゥエ氏)。ポスト京都のあり方が、京都議定書の実効性も左右するというわけだ。

 こうしたなか、COP10では会期前から議長国のアルゼンチンがポスト京都に向けた非公式会合を主要国に打診。1997年の京都会議(COP3)で全体会議議長を務め、信頼の厚い同国のエストラーダ環境問題大使が根まわしに奔走し、最終的に「セミナー」の開催に落ち着いた。

排出量取引で先駆け狙う EU

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洪水で水びたしになったブエノスアイレスの街の様子(合成写真)を、COP10会場前でNGOが展示。気候変動対策の重要性を訴えた。前を歩くのは地元俳優が扮したブッシュ米国大統領
 ポスト京都に最も前向きだったのは欧州連合(EU)だった。「京都議定書は気候変動対策の第一歩にすぎない。さらなる排出抑制が必要だ」(ピーター・ヴァン・ギエルEU代表団長)という姿勢の裏には、1月1日からEU域21カ国でスタートした排出量取引の存在もある。

 この制度は域内の大企業にCO2の排出枠を割り当て、排出に余裕のある企業とない企業が枠を取引する。EUは同制度を通じて経済活性化と大幅な排出抑制の両立を目指しているが、それにはポスト京都でも京都議定書の枠組みが維持されることが前提になるからだ。

 ノルウェーのシンクタンク「ポイントカーボン」のジョルン・ブエン氏は「排出量取引には米国の企業も関心を寄せているが、京都議定書を批准していない米国企業は参加できない。今のうちに排出量取引という新たなビジネスチャンスで世界に先駆けようという狙いがEUにはある。そのためにもポスト京都の議論を早く始め、京都議定書の枠組み存続を測りたい考えだ」と説明した。

削減へ取り組みの兆し 途上国

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COP10会場前で、ずらりと並んだ長靴に各国の旗が飾られた。企画したNGOは「気候変動で各国が水没の危機に瀕している」と訴えた
 途上国グループにも変化の兆しは見られた。発展途上国のなかで経済成長がめざましいブラジルと中国がCO2の国別排出量の報告書を昨年初めて、条約事務局に提出。参加各国に好意的に受け止められた。排出量を的確に把握して報告することは、排出削減の取り組みへの第一歩にもつながるからだ。

 会期中、両国が報告書を説明するため共催したシンポジウムには、報道関係者や各国代表が詰めかけた。

公平性の原則重視

 明日香壽川・東北大教授(環境政策) 中長期的には途上国の温室効果ガス削減・抑制は必要だ。ポスト京都の国際制度を構築するうえで重要なのは「公平性の原則」だろう。豊かな暮らしを享受してきた先進国が途上国に「電気を使うな」とは言えない。途上国の開発の権利は優先度が高くあるべきだ。

 排出抑制の責任と義務の大きさは、ひとり当たりの排出量と所得の大きさに比例する。現在途上国に分類されている国でもひとり当たりの排出量や所得が先進国に近い国もある。その意味で「ポスト京都」では現在の先進国・途上国の分類ではなく、各国の状況を考慮したルールを新設していく必要があるだろう。

≪ポスト京都≫

 京都議定書は先進国に対し、CO2などの温室効果ガスの排出量を2008年から12年までの間に、1990年の排出量比で削減する国別目標を課している。13年以降の「ポスト京都」の国際制度については、今年11月開催の京都議定書第1回批准国会議(MOP1)で正式議題となる。「セミナー」は今年5月に開かれる予定。条約加盟各国の専門家レベルの会合で成果が締約国にフィードバックされる。

(2005年1月18日掲載)


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