Kyoto Shimbun


環境を考える
「新エネルギー」へ模索

 生ゴミやペットボトルから燃料をつくり出し、発電する実験が愛知万博で行われている。生まれたエネルギーは「長久手日本館」の電力を100%賄い、館の運営を支えている。身近なごみを使ったこの最新技術の成否は収集段階での徹底した分別にかかってくる。洗えば使えるペットボトルはともかく、生ごみでの発電は微生物の働きに左右され、ごみに医薬品がわずかに混じっているだけで微生物の活動が止まってしまう。このため発電に使っている生ごみはレストランの調理場から出る分だけといい、実用化へのハードルは高い。(社会報道部 太田敦子)

愛知万博 ごみも一転、電力に
レストランの残り、ペッドボトルを活用

 愛知万博の長久手会場に西ゲートから入る。正面に大きな竹かごを組んだような建物が見える。地球を100万分の1の大きさにした「360度全天球型映像システム」が売り物の長久手日本館だ。日本の自然を写した映像が球形のスクリーンいっぱいに映し出されていた。迫力ある画面に観客から歓声が沸き起こる。

 このパビリオンの電力は会場のレストラン調理場から回収した生ごみや来場者が飲んだ後のペットボトルからつくられている。生ごみが微生物によって発酵するとメタンガスが出る。ペットボトルや会場建設時に出た木材も1200度で熱分解するとガスが生じる。これらのガスから取り出した水素に化学反応を起こさせて電気をつくる。

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生ごみや廃材からの発電に取り組むNEDO技術開発機構の実証研究プラント(愛知万博長久手会場
 発電施設は館のすぐ近くにある。処理する生ごみは毎日約3トン。普通の家庭から出る生ごみの6000世帯分以上にあたる。処理量は開幕当初に比べて約1トン少なく、関係者は開幕後の会場への弁当の持ち込み許可などが影響しているとみる。ペットボトルは1日に25キロ(1000本)を処理。その結果、生ごみから1日あたり2000キロワット、ペットボトルから150キロワットの電気が生まれている。一般家庭の電気使用量は1日あたり10キロワットといわれるから、相当な発電量になる。

 施設はさまざまな発電方式を組み合わせた「分散型エネルギーシステム」で効率のよい発電を目指す。生ごみやペットボトルのほか、都市ガスと太陽光による発電や夜間につくった電気を貯める蓄電池の実験も行われ、全体で1日あたり1万9500キロワットも発電している。長久手日本館だけでは使い切れず、隣接の「NEDOパビリオン」にも供給している。

 この実験は石油や化石燃料に頼らない発電を目指す「新エネルギー等地域集中実証研究」と呼ばれる。全国3カ所でのプロジェクトのひとつとして、2003年度から5年計画で進められている。万博会場の実験だけで85億円の予算がつく巨大プロジェクト。NEDO技術開発機構(新エネルギー・産業技術総合開発機構)を中心に愛知県や企業も参加する。

 万博では狭いエリアに確実に電気を届けるのを主眼に置いている。「ばらばらの発電システムの組み合わせなので電気の質が不安定だ」とNEDO技術開発機構の志賀英俊主査は説明する。

 システム全体の制御に加えて、収集段階の分別が大きな課題。特に生ごみ発電は「予期できないごみ」に妨げられる恐れがある。NEDO技術開発機構によると、抗生物質などの医薬品が生ごみに混じると微生物を殺してしまう可能性がある。どのようなごみが発電を妨げるのかも詳しくは分かっていない。環境をテーマにしている博覧会とあって、会場のごみ箱は「生ごみ」「割りばし」「紙コップ」「缶」など9種類にも分類されているが、実験に使われるのは薬品類を一切含まないレストラン調理場から出た分に限定されている。生ごみ発電にはこれまで以上に徹底した分別が必要なわけだ。

 ペットボトルは会場で回収した分が発電に利用されている。NEDO技術開発機構の高野浩二主査は「ボトルのラベルをはがしたり、中身を洗ったりして捨ててもらうだけで、発電の安定性は良くなる」と話す。

 実験は万博終了後も中部国際空港近くに場所を移して続けられる。(2005年5月17日掲載)


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