Kyoto Shimbun


環境を考える
異常高温 米どころ、適応に躍起

 気候変動に国内農業が対応を迫られつつある。猛暑や異常高温が例年のように起きるなか、米どころでは田植え時期をずらしたり、作付け品種を転換したりするなど地道な工夫が始まっている。温暖化が進めば果樹の栽培分布が大きく変化する可能性も指摘され、新しい雑草や害虫の定着も懸念されている。(社会報道部 日比野敏陽)

遅植えや品種転換
暑さ避け品質維持


 一面に水田が広がる滋賀県能登川町栗見新田。色づいて頭を垂れ始めた稲穂が目立つ一方で、まだ稲穂が青く直立している田んぼも少なくない。成長の違いが目立つのは田植えの時期を従来の5月の連休中から5月15日ごろにずらす農家が増えているからだ。

 「5月の連休に植えると、出穂した直後に真夏の猛暑にさらされる時間が長くなり、コメが劣化してしまう。気候の変化で夏が暑くなったため、コメの品質を維持するには『遅植え』が欠かせなくなっている」。地元のグリーン近江農協で栽培指導などに携わる冨江智さん(42)はそう説明する。

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猛暑を避けて遅植えした稲穂はまだ頭を垂れていない(右)と頭を垂れているイネ(左)(滋賀県能登川町)
 良質なコメが育つには出穂後から刈り取りまでに通算1000度の温度が必要とされている。しかし短期間で高温にさらされると、コメの成長速度に養分補給が追いつかず、デンプンの詰まりの悪い白濁したコメになってしまう。5月の連休の田植えは出穂期と近年の猛暑や異常高温が重なり、全国的にコメの品質劣化を招く結果になっている。遅植えは出穂期と最も暑い時期の重複を少しでもずらそうという工夫だ。

 滋賀県では1999年から特に品質低下が著しく、2002年には県産米の50.5%が2等米以下に転落する事態に陥った。県は「このままでは近江米ブランドは崩壊しかねない」(農業経営課)と危機感を強め、JAなどを通じて「遅植え」を奨励。現在、県内の全作付けの50%が5月中旬に田植えを行うようになっている。

 グリーン近江農協は遅植えだけでなく、早生品種のササニシキから遅植えに適し、暑さにも強いヒノヒカリへの品種転換も勧めている。自身もコメ農家の冨江さんは「コメの生産者は温暖化の影響を実感し、適応の努力を始めている。こうした取り組みを都会の消費者にも知ってもらいたい」と話す。

 ■果樹分布に影響

 温暖化は農作物の生育にどのような影響を与えるのか。農業技術研究所(茨城県つくば市)の鳥谷均研究官らの予測では、2060年には地球上でイネ、小麦、トウモロコシの栽培可能面積は1990年比で4%増加するが、アジアは人口増で耕作地が15%減。中国やインドでは雨が増えるため、乾燥を好む小麦の栽培には適さなくなるという。

 日本国内では北海道でコシヒカリが栽培できる可能性があり、また温州ミカンが東北沿岸部で栽培できるようになることも考えられる。一方で、リンゴの着色が悪くなる、ブドウの果肉が硬くなることなども予想される。(2005年8月16日掲載)


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