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Kyoto Shimbun
進む 北極圏の環境変化
特有の生態系 壊滅も 気温1度上昇 氷の溶解面積 日本の3倍 「このままではホッキョクグマは動物園にしかいなくなる」。米気象協会のロバート・W・コレル博士はこう強調した。COP/MOP1にあわせモントリオール市で開かれたイベント「北極の日」(カナダ政府主催)でのことだ。コレル博士は気温上昇などの急激な環境変化がホッキョクグマなど北極特有の生態系を破壊しつつある状況を詳細に解説。早急な温暖化対策の必要性を訴えた。 ホッキョクグマは海に張った氷の上からアザラシなどを捕まえて食べる。アザラシが氷のわずかな穴に顔を出した瞬間を狙うのだ。氷が解ける夏は何も食べずに過ごす。「近年、海が凍らない時期が伸びており、栄養失調状態のホッキョクグマが増加。子グマの生存率も50%以下に低下しつつある」。コレル博士はそう指摘した。 実際に北極圏ではどの程度気温が上昇しているのか。観測はカナダやグリーンランド、ロシアなどで別々に行われており、地域によっては過去15年間で2度近い上昇も確認されている。世界自然保護基金(WWF)の2005年1月の報告では、産業革命前に比べ地球全体の気温は平均0.6度上昇したが、極地では温暖化の効果は2−3倍に高まり、1度の上昇で日本の面積の約3倍に相当する氷が溶けるという。 こうした研究は米雪氷データセンター(NSIDC)や米航空宇宙局(NASA)の共同調査でも裏付けられている。昨年九月、北極海を覆う氷の面積が1978年の衛星による観測開始以来、最小を記録した。 NSIDCによると、氷の減少で海がより多くの太陽熱を吸収、氷がさらに縮小する効果が起きているという。NSIDCは「21世紀末より前に北極の夏の氷は消える可能性がある」と警告。氷の回復も昨冬に史上最小を記録しており、春先の溶け始めも早まっている。 伝統文化危機に カナダのイヌイット・タピリット・カナタミ共同体代表ジョゼ・クスグックさんの話 われわれイヌイットは狩猟で生きてきた。その前提として雪と氷があったが、急な気象の変化でわれわれの伝統文化は危機にひんしている。 イヌイットの猟師は太古からの自然のリズムやサイクルを知り、自然と付き合う知恵を伝えてきた。しかし最近の漁師は天候が予測できないと嘆いている。北極の海では昔は安全だったところでも氷が割れ、海に落ちて落命する猟師も増えている。海氷の上で狩猟することは年々難しくなっている。狩猟の旅に出ても、獲物を雪原に保存して旅を続けることができない。雪が減り凍土が解けているからそりやスノーマシンが使えず、最近の若い世代は4WDの自動車に乗るようになった。狩りから遠ざかるようになると食生活の体系も変化し、過去にはなかった病気や肥満に悩む人が急増している。 ≪北極圏≫ 北緯66度33分以北をいい、北極海とアジア・北米の北に接する地域。グリーンランドを含む。最も暖かい月の平均気温が10度を超えず、永久凍土層やツンドラ植生が特徴。オーロラや磁気嵐が発生する。従来は人の活動が少なかったが、近年の調査でアザラシやホッキョクグマなど野生動物から水銀など有機金属が検出され、環境汚染が懸念されている。(2006年1月17日掲載)
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