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Kyoto Shimbun
貴重な湿地 シカから守れ
京や尾瀬で被害 増加、人間に遠因 個体調整乗り出す 立派な角のオスジカが白昼堂々と浮島の草むらをかっ歩する。深泥池に設置された自動撮影装置が昨年10月、その姿を初めてとらえた。他の写真にはメスジカも写っており、少なくとも4頭が確認された。京都市文化財保護課は「こんな市街地に出没していたとは」と驚きを隠さない。 シカはカキツバタやミツガシワなどの水生植物を食べ、ミズゴケを踏み荒らしていた。撮影した京都大生態学研究センターの辻野亮さん(29)によると「浮島は日当たりがよく、シカの好物のササなどが良く育つ」。 ただ深泥池水生生物研究会によると、深泥池の場合はシカが悪者とは断定できないという。研究会世話人の竹門康弘京都大防災研究所助教授(生態学)は「これまで気付かなかったが、10年前の空撮写真を見てもシカの踏み跡が浮島に無数にあった。住民からの聞き取り調査でもかなり以前から目撃されている。生態系の中でシカが果たす役割は不明で、池の植生がシカの捕食の上に成り立っている可能性もある」と話す。
一方で池周辺のスミレ群落に食害が広がっていることから、シカの頭数が増えていることは間違いないという。フンが池の富栄養化を招く恐れもあり、研究会は新年度、シカが入れない区画を浮島に設けてその影響を調査する予定だ。 たい積物中に2万5000年前の花粉などが残り、植物研究の重要なフィールドになっている左京区の八丁平では、1997年に初めて被害が確認された。カキツバタ群落が食害で壊滅し、ミズゴケが踏み荒らされて湿原の乾燥が進んだ。市はカキツバタ群落にネットを張ってシカの侵入を防いでいるが、対策は一部にとどまっている。 一般にシカが増えた原因として▽温暖化で積雪が減り、子ジカの生存率が高まった▽狩猟者が減った▽オオカミがいなくなった−などが挙げられる。さらに人工林化で森林のエサが減り、身を隠しやすい耕作放棄地が増えたことで、野生動物が人里に現れるようになった。 日本を代表する湿原の尾瀬でも約10年前から同様の問題が起きている。環境省は2000年に「尾瀬地区におけるシカ管理方針」を策定。湿原周辺でシカの狩猟頭数制限を緩めるなど、個体調整に乗り出している。 京都府もシカの捕獲を進めているが、減る気配がないため、今年度から狩猟頭数を緩和、5年後には現在の推定生息数2万7000頭の半減を目指すという。 森林保全課は「広葉樹を奥山に植えたり、森林周辺の見晴らしを良くしたりして、人里への侵入も防ぎたい」とする。 シカの増加と出没は人間の広範な営みが遠因になっているだけに、問題の根は深い。貴重な湿原を後世に残すため、幅広い英知と努力が求められている。 (2006年3月21日掲載)
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