Kyoto Shimbun


環境を考える
魚道普及、実用性に課題

 河川環境をめぐる意識の高まりを受け、近年、全国の川で魚の移動に配慮した川づくりが進められている。国土交通省は昨年、魚道づくりのマニュアルを作り、京都、滋賀でも多くの魚道がこれまでに造られている。しかしなかには効果が疑わしいものもある。京滋の河川でアユの遡上(そじょう)が盛んになるこの時期、魚道の課題を探る。(社会報道部 目黒重幸)

京滋の河川 堰や土砂 移動阻む
設置後の検証が重要


 琵琶湖に注ぐ大津市和迩中浜の喜撰川。「立派な魚道が造られているんですが…」。大津市の環境団体「びわ湖自然環境ネットワーク」の寺川庄蔵代表は川を指さしてつぶやいた。この魚道は川幅いっぱいに段差が設けられている。魚がどこからでも上れそうなのだが、その約200メートル下流に高さ約1・3メートルの堰(せき)がある。

 ネットワークが一昨年、この堰の直下で魚を調査したところ、アユやナマズ、オイカワなど13種が確認された。しかし堰の上流ではカワムツやタカハヤなどもともと中上流部に住む4種類しか見られなかった。「魚たちは堰を越えらないので、立派な魚道も意味がない」と寺川さんは言う。

 琵琶湖のアユは湖から川を上って産卵し、稚魚はまた川を下って湖で育つ。ナマズやフナなら川から水路、田んぼへと入って産卵することもある。多くの魚にとって、生活や繁殖のために移動が欠かせない。

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琵琶湖に注ぐ喜撰川に環境団体が設置した手作りの魚道(大津市和迩中浜)

 魚道は昔から造られているが、その重要性を裏付けたのが、法の目的に環境保全を盛り込んだ1979年の河川法改正だ。国交省も昨年「魚がのぼりやすい川づくりの手引き」を作り、魚類やその他の生き物の移動に配慮するよう求めた。

 しかし魚道のなかにはその効果が疑わしいものも多い。滋賀県水産課が昨年、県内主要河川の魚道を調べたところ、近くに堰があったり、流木や土砂が流路をふさいだりするなどして効果のない魚道が94カ所のうち10カ所あった。京都でも例えば桂川には多くの魚道が設置されているが「水が流れてなかったりして何の役にも立たない。放流したアユはみんな堰の下にたまっている」(保津川漁協)。

 魚の生態に詳しい琵琶湖博物館の前畑政善総括学芸員は「魚の生態を考えず『こんなもんでいいやろ』と造られた魚道が多い。せっかく造っても、その効果の検証がないので次に生かされていない」と指摘する。

 滋賀県と京都府の河川行政担当者も予算や人手不足を理由に検証作業や流木・土砂の除去など維持管理をしてこなかったと認める。魚道設置の費用は1カ所で数千万円、大きくなれば億を超えることもある。効果がなければ税金の無駄遣いにもなりかねない。河川管理者は民間の力を借りてでも検証や維持管理をすべきではないか。

 喜撰川の自然再生に取り組んでいるびわ湖自然環境ネットワークは昨年、魚道の下流にある問題の堰に間伐材を利用した手作りの魚道を試験的に設置した。試験期間中に魚道が破損してしまったが、それでも魚道の途中までアユの上っていることが確認された。今年も春から同じ場所に設置しており、近くその効果を調べる予定だ。寺川さんは「昔のように多くの魚であふれ、子どもたちが魚捕りできるような川になってほしい」と夢を語っている。 (2006年5月23日掲載)


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