Kyoto Shimbun


環境を考える
古都、松の風情守れ

 松の再生に向け、官民一体となったプロジェクトが近く京都で始動する。松は東山など三山の景観に欠かせず、社寺などの庭園の主役でもある。約30年前から松枯れ被害が広がっていたが、近年、松枯れに強い品種の開発が進んだことで、復活への光明が見えてきた。関係者は「松復活は日本文化の再生につながる」と意気込んでいる。(社会報道部 目黒重幸)

官民一体、復活プロジェクト始動へ
松枯れに強い品種開発進む

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金閣寺の庭園には松枯れで切り倒された木の跡が残る。松復活は京の景観や文化の継承に欠かせない(京都市北区)

 観光客でにぎわう金閣寺(京都市北区)。庭園の裏山に、小さな松の苗木が植えられている。「これが松枯れに強い抵抗性の品種です。大きく育てば、庭園の景観も少しは改善されるはずです」。緒方香州執事はまだ頼りなげな苗木の成長を見守る。

金閣寺で第1弾

 金閣寺では1970年代から松枯れが進み、樹齢100年以上の木を含め30本以上を切り倒した。庭園に目をこらすと、あちこちに大きな切り株が見える。「こんなことになり、情けない。形や大きさをコントロールできる松は日本庭園の主役として欠かせないのだが…」。抵抗性の松への期待は大きい。

 この金閣寺もメンバーとなり、来月「古都のマツの緑復活プロジェクト」が正式に発足する。林野庁京都大阪森林管理事務所(上京区)と京都府の呼びかけで、市、京都大など研究機関、社寺や文化人、一般市民などで構成する官民一体の運動体だ。金閣寺の苗木は取り組みの第一弾で、発足に先駆けて3月に植えられた。

 プロジェクトの目標は松のある景観を取り戻すことにある。今はうっそうと緑が茂る三山だが、薪炭林として酷使されていた時代は荒れ地に育つアカマツが多かったという。

息長い取り組みを

 景観だけでなく、松は京都の文化も支えてきた。古来多くの絵画や詩歌、生け花などの題材となり、五山の送り火でアカマツの割り木が使われるなど、宗教行事にも欠かせない。プロジェクトを呼びかけた京都大阪森林管理事務所の村上幸一郎所長は「京都の人が松にかける思いは驚くほど強い」と話す。

 プロジェクトでは各行政機関が松枯れ防除に力を入れるとともに、抵抗性品種の植樹を進めていく。京都仏教会(上京区)も今月から会員社寺に呼びかけ、希望者に抵抗性の苗木の配布を始める。

天橋立でも活動

 松再生の動きは京都市内だけではない。白い砂浜にクロマツ並木の緑が映える天橋立(宮津市)も、松枯れと一昨年の台風23号で被害を受けた。「天橋立を守る会」の森輝吉会長は「橋立に松がなければどうにもならない。苗木を植えたり、土壌改良を進めたりして松を守っている」。11月には金閣寺や天橋立の関係者も参加し、松復活に向けたシンポジウムも開かれる。

 ただ苗木を育てるのには時間がかかり、一方で広大な面積がすでに枯損しているため「すべての場所に復活させるのは難しい」と村上所長は言う。そのため庭園や山の尾根など人目につきやすいところから再生を進める予定だ。松林の復活には数十年単位の時間がかかる。息の長い取り組みが求められる。(2006年8月22日掲載)


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