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Kyoto Shimbun
日本のカエル 絶滅の危機
両生類キラー ツボカビ上陸確認
昨年12月25日、麻布大(神奈川県相模原市)の獣医病理学教室に持ち込まれた南米原産のベルツノガエルは目を見開いたまま、じっと動かなかった。生きているが、ひっくり返しても起き上がらない。検査の結果、国内初のツボカビ感染が確認された。「ついに日本にも来たか」。顕微鏡をのぞき、宇根有美准教授は戦慄を覚えた。 アフリカ起源のツボカビはカエルの皮膚のセルロースなどを食べて増殖する。カエルは皮膚呼吸が阻害され、数日から2週間ほどで死ぬ。人間には感染しないが、淡水の中を自由に移動するため、伝染力が強く、1990年代に感染が確認されたオーストラリアや中米パナマでは現在、カエルが絶滅の危機に瀕(ひん)しているという。 日本でも自然界にツボカビが広がれば「根絶は不可能」(宇根准教授)と見られている。このため獣医師や研究者、自然保護団体などが1月14日に「緊急事態宣言」を共同発表。不自然に死んだカエルの検査を受け入れる全国の研究機関や獣医師のネットワークを築くとともに「死んだカエルを川に流したり、土に埋めたりするのは絶対やめてください」と呼びかけている。 環境省もカエルの慎重な取り扱いを呼びかけ始めた。しかし両生類の輸入、流通には規制がなく、行政として感染を防ぐ有効な手だてを打ち出せていないのが現状だ。 世界自然保護基金(WWF)日本支部の大倉寿之さんは「現行法ではツボカビのまん延を防げない。ツボカビを特定外来生物法か植物防疫法の対象にするとともに、両生類の取引を登録する仕組みが必要だ」と指摘する。 なぜツボカビがこれほど恐れられるのか。カエルは食物連鎖の中間に位置し、自然の生態系を維持する鍵となっている。カエルの大量死が生態系全体に与える影響は計り知れないと予想されるからだ。 日本爬虫両生類学会会長の松井正文・京都大教授によると、日本のカエルは住宅や道路開発が進んだ地域を中心に減り続けている。このためカエルだけを食べるヘビのヤマカガシも急速に減少。ヤマカガシを補食する猛禽類のえさも少なくなっているという。 松井教授は「カエルは昆虫を食べ、ヘビやトンビに食べられる。日本でツボカビが自然界に流出すれば、食物連鎖の上位にも下位にも相当深刻な影響が現れる可能性がある。カエルの絶滅がほかの生物の絶滅を招きかねない」と警告する。 影響は自然界にとどまらない。カエルは大量の昆虫を食べている。カエルの減少や絶滅は、害虫の大量発生を招く。松井教授は「農薬を使わない有機農業も不可能になりかねない」と話す。 【死んだカエル捨てないで!】 国内でツボカビ感染が確認されたことを受け、研究者や獣医師はカエルの扱いに注意を呼びかけている。 ツボカビは両生類にしか感染しないが、大型熱帯魚のえさとして輸入カエルが流通しているため、ペットショップの水槽を通じて感染する危険性もあるという。 麻布大などでは感染防止のため死んだカエルは焼却処分するよう呼びかけている。 カエルの検査、相談は麻布大TEL042(850)2477か慶応大TEL045(566)1333で受け付けている。京都では▽ながおかきょう動物病院TEL075(955)6310▽京都大大学院人間・環境学研究科(松井研究室)TEL075(753)6846で受け付けている。(2007年5月22日掲載)
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