Kyoto Shimbun


環境を考える
脱開発へ 各地で“挑戦”

 住民主体の新たな川づくりを目指す「川を流域住民が取りもどすための全国シンポジウム」が先月、吉野川可動堰(ぜき)問題を抱える徳島市で開かれた。パネル討論「河川法改正から10年−それぞれの挑戦」には法改正をきっかけに生まれた淀川水系流域委員会の前委員長や元河川官僚、カヌーイストらが参加。川の現状や課題について熱のこもった議論を繰り広げた。(滋賀本社 目黒重幸)

どうしたら川は流域住民のものになるのか
徳島でシンポ 「河川法改正10年」討論

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河川法改正から10年たち、日本の川の現状や課題を考えたパネル討論(徳島市・徳島大)

 姫野 河川法改正から10年。徳島では吉野川第10堰問題を巡る住民投票で人々が川に対する1票を投じたが、残念ながら国交省はこの問題を棚上げにしている。どうしたら川は流域住民のものになるのか。この10年で何が変わり、何が課題として残っているのか。

 矢上 まず自分の心を変えようとした。私が国会議員を務めていた時、有力な地盤は川辺川ダム推進だった。ダム反対と言えば、すべてを失う恐怖感があった。しかし当たり前のこと、正しいことを言おうと、思い切ってダム反対と言った。

 野田 住民意識が強くなった。僕は遊び人なのでこういう問題に関心がなかった。しかし長良川河口堰の問題で、国家があまりにも嘘(うそ)八百、恐喝と不正をする。それで反対運動に入った。当時は非常に孤立したが、今は「政府はおかしい」という声が強くなっている。
 でもダムは全敗だ。特に40歳代以下の人は川のことを知らず、国交省の嘘にだまされる。だから子どもを相手にしようと、川の学校を始めた。川に潜り、魚をつかまえて遊んだ卒業生は、あと5、6年すれば強力な反ダム勢力になる。

子どもと遊び

 宮本 野田さんが国交省は嘘つきと言うように、私はダムや長良川河口堰に携わって河川行政に対する国民のすごい不信感を感じた。これではいい川づくり、地域づくりはできない。(旧建設省の)河川局でも「変えなだめだ」と考え、河川法が改正された。治水と水源開発に加え、環境の保全と整備を入れた。
 もうひとつ大きなポイントが「住民意見を反映します、もう国が勝手にしません」ということだった。淀川では信頼関係を築くため、いろんな思いを持つ人とキャッチボールするしかないと(淀川水系流域委員会を)スタートさせた。日本の川はいろんな動きがあるが、新しい流れで進むのか、逆戻りするのか、まだしのぎあいにある。これからが正念場だ。

 松本 武庫川では流域全体で考える総合治水を掲げた。しかし総論は賛成だが、各論になると壁が厚い。田んぼに水をためようとすると「田は公的管理が及ばないから(治水策の)対象にならない」とか言う。何かと中央の顔色をうかがう県職員の姿勢を変えるのも並大抵ではない。

新しい流れを

 姫野 なぜ開発推進の立場だった今本さんは変わることができたのか。住民の活動の味方をしてくれる今本さんのような専門家や新河川法の理念を体現しようとする宮本さんのような官僚は今後も出てくるのか。

 今本 私は「裏切った」と言われることもある。治水と利水と環境は3本柱というが、環境はベースだ。いくら立派な治水をやってもベースがだめなら崩れる。今は立場上言い出せないかもしれないが、やがて第2、第3の専門家が出てくるだろう。

 宮本 淀川河川事務所などにいた時、職員が目を輝かせて働いてくれた。新しい流れをやろうという人はいっぱいいる。どこか突破口があれば、国交省の職員はわーっとやってくれるはずだ。

 姫野 住民が本当に川を自分のものに取り戻すには何が必要か。

実感ぶつけて

 宮本 役人は理屈で言われても変わらない。「本当にしんどいんや」と住民に真剣に言われたとき、初めて変わる。川をめちゃめちゃにしてやろうとか、嫌われてやろうとか、役人は思っていない。だから川に関する実感をぶつけてほしい。

 野田 この前、親子が川で泳いでいたら役場の車が来て「危ない」と怒っていた。こんな役人は張り倒し、水中に放り込まないといけない。放り込むと暴力行為になるので、抱きついて一緒に川に飛び込み「滑って落ちた」と言えばいい。

 矢上 私の周りの首長や県会議員はみんなダム推進で「なぜおまえは反対か、説明責任を果たせ」と言われる。私も基本高水流量とか勉強するが、翌日には忘れてしまう。魚がすめるきれいな川を残したいという思いに、説明など要らない。子どもでも分かることを、なぜ大人は政府に対して表現できないのか。川を取り戻すということは、当たり前のことを表現できる心を取り戻すことでもある。(2007年9月18日掲載)

 ◇パネリスト

 宮本博司さん(淀川水系流域委員会委員長) 国交省の官僚として河川法改正にかかわり、淀川委員会を設立。昨年退職、公募で委員に就く。

 今本博健さん(京都大名誉教授、淀川水系流域委員会前委員長) 河川工学者として淀川委員会参加。ダムに厳しい姿勢で論議をリードした。

 矢上雅義さん(熊本県相良村村長) 2001年に相良村村長。地元の川辺川ダム計画に対し、治水対策や産業振興の面から建設反対を表明。

 野田知佑さん(カヌーイスト・作家) 日本のツーリングカヌーの草分けで、川や環境に関する著書多数。吉野川「川の学校」校長も務める。

 松本誠さん(兵庫県武庫川流域委員会委員長) 神戸新聞記者時代から環境問題やまちづくりの分野で活躍。04年から武庫川委員会委員長。

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 司会 姫野雅義さん(吉野川シンポジウム実行委代表世話人) 吉野川可動堰の建設是非を問う住民投票運動をリードした。司法書士で釣り人。


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