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 京都新聞は、観光都市京都のパワーアップを目指して企画「観光・京都おもしろ宣言」をスタートさせました。人々の価値観はいま、物の豊かさから心の豊かさに移りつつあります。京のまちは伝統、歴史、自然環境と、どこを取っても格別な魅力をたたえてきました。京都新聞はそうした魅力に光を当て、京都を元気にする紙面を多彩に展開するとともに、フォーラムやイベントの開催、伝統文化体験の案内など、さまざまな「おもしろ」企画を発信していきます。

おせち料理

京風おせち料理の作り方を熱心に学ぶ市民ら(京都市中京区・京都料理専修学校)

 師走が迫り、迎春準備も慌ただしい。お正月に欠かせないのが、おせち料理だ。最近では、百貨店やスーパーで買う「おせち」が定番となり、京都の料亭が手がけた豪華版が特に人気を集め、予約開始から30分で売り切れるケースもある。京都では、古くから「お重詰め」や「組重」などの呼び名で親しまれ、家庭で伝統の味が受け継がれてきたが、徐々に様変わりしてきた。おせち料理の歴史や文化などを探り、その魅力を再発見した。

 「おせち」とは、「御節供(おせちく)」の略で、平安時代の宮中に行われた行事に由来するとの説もある。本来、端午や七夕など、五節句に食べる料理を「おせち料理」と呼び、正月料理だけを指したわけではない。現代のように、ごまめや数の子などを重箱に詰める風習が広まったのは、江戸時代後期だとする説が有力だ。

祝いの酒の肴

京都の料亭が重箱に詰めた豪華な京風おせち料理(菊乃井提供)

 林原美術館(岡山市)の熊倉功夫館長(日本文化史)によれば、節日の料理は、民間信仰の一種の表れだという。「日本には、団子のように、高く積み上げたものを食べることで、神様の『気』を体内に入れようとする考えがある」と指摘。重箱や鏡もちで積み上げる風習にも通じているようだ。

 鏡もちのように、飾る「おせち」と、実際に食べる「おせち」が生まれ、個々の料理に、語呂合わせで長寿や多産、豊作などの意味が込められたという。熊倉館長は「本来のおせち料理は素朴で、それ自体がごちそう。黒豆やくりきんとんのように、甘味が多いのは、砂糖がぜいたく品だった名残。また、おせち料理は、あくまでお祝いの宴に出す酒の肴(さかな)だ」と話す。

保存に重点

 おせち料理は、正月に台所仕事をしなくてすむようにとの思いから保存に重点が置かれたが、冷蔵技術や輸送手段の発達にともない、嗜好(しこう)品としての性格が強まった。高度経済成長期を境に徐々に豪華になっていく。

豪華なおせち料理を販売している京都の百貨店。年末が近づくと売り切れが続出する(京都市下京区・京都高島屋)

 資料などを見る限り、1980年代ごろから、京都の料亭が手がけた豪華な「京風おせち」が数多く登場する。イクラやカニ身、伊勢エビなどの魚介類をふんだんに使ったり、京野菜にこだわった料理が増えていく。堀川ごぼうのしんをくりぬき、カニやえびのすり身を詰めたり、棒だらとえびいもの炊き合わせ、八幡巻きなど、各料亭が自慢の京料理も重箱に詰め始め、定番になっていく。最近では茶懐石にヒントを得たり、イタリア版おせちも登場している。

 京都市下京区の京都高島屋によると、10年前から、買うおせち料理が定着し、年々、売り上げを伸ばしている。今年は約260種類のおせち料理を販売。売れ筋は平均2万円程度だが、京都の料亭を中心に、10万円前後の和風おせちが予約開始後すぐに完売するケースが多いという。

 同店惣菜売場の田中津久浩課長は「百貨店のおせち料理は一度買うと、リピーターになる方が多いのが特徴。特に、京風おせちは、京都というブランド力のため、全国的な人気がある。今後、京風おせちの展開が楽しみですね」と語る。

[京都新聞 2006年12月18日掲載]