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 京都新聞は、観光都市京都のパワーアップを目指して企画「観光・京都おもしろ宣言」をスタートさせました。人々の価値観はいま、物の豊かさから心の豊かさに移りつつあります。京のまちは伝統、歴史、自然環境と、どこを取っても格別な魅力をたたえてきました。京都新聞はそうした魅力に光を当て、京都を元気にする紙面を多彩に展開するとともに、フォーラムやイベントの開催、伝統文化体験の案内など、さまざまな「おもしろ」企画を発信していきます。

京の市めぐり

工芸家や芸術家らの登竜門にもなっている「百万遍さんの手づくり市」(京都市左京区・知恩寺)

 京都では1年を通じて多くの「市」が開かれている。「天神さん」(北野天満宮・京都市上京区)や「弘法さん」(東寺・京都市南区)といった由緒ある市だけでなく、新しい市も活気にあふれている。手作りの品々が並ぶ市、趣味の人が集う市、学問の街ならではの古本市…。工芸作家や芸術家の登竜門になっている市もある。全国的にも注目を集めている京都の市に触れてみた。

 左京区の百万遍交差点は毎月15日、人出が急増する。近くの知恩寺で「百万遍さんの手づくり市」が開かれるためだ。境内に足を踏み入れると、広いはずの境内は店と人であふれんばかり。本堂の裏側にもびっしりと店が並んでいる。じっくり見て回るにも、かなりの時間がかかりそうだ。

若手作家の登竜門

 「手作りの腕時計」の店を見つけた。製作、販売しているのは山本美子さん=京都市中京区=。ムーブメントは国内時計メーカーから仕入れているが、文字盤やベルトなどは完全に独自デザインだ。最新モデルは文字盤に金箔(きんぱく)を使ったもの。多くの人が足を止めて見入って行く。

 山本さんは、時計を街中の店に置いてもらい販売しているが手づくり市にも毎回出品。「手づくりの腕時計」という予想外の出会いに触発される客も少なくなく、売れ行きは悪くないという。

榎本潔さん

 洋服や帽子などを販売している坪江江里さん(29)=上京区=も手づくり市の常連だ。坪江さんは古い町家を改装したアトリエを拠点にオリジナル商品の製作、販売を続けている。「市には思いもかけない出会いがある。それが新しい創作につながることもある」と話す。

 店舗を持たず、市やネットだけで販売しているという人もいる。皮のハンドバッグや財布を作っている泉正勝さん(37)=左京区=。「店だとわざわざ来てくれる人だけがお客さんだけれど、市のお客さんは予想外の感想やコメントをくれる人に出会え、役に立つ」という。出店者は市に「思わぬ出会い」を期待しているようだ。

山本美子さん手づくりの腕時計。文字盤に金箔を施した最新デザイン

 知恩寺の手づくり市を始めたのは榎本潔さん(56)=下京区=だ。「妻がデパートに自分の手づくり品を出品していたが、デパートは規制が厳しい。それなら自分たちでやってみよう、と」。

 それからすでに20年。榎本さんによると、この10年で若い出店者が増え、商品の質が急速に向上してきたという。「手づくり品には人柄が出る。この人は売れるだろうな、長持ちするだろうな、と思ったら、ほぼそうなる。出店も全国から応募があり、お客さんもネットを通じて遠くから来るようになった」。

カバンや小物が所狭しと並ぶ(知恩寺)

新しい市も続々

 知恩寺の境内はすでにいっぱい。50の出店枠をめぐる競争率は1・5倍になる。「リピーターの客がついている店も増えているから、完全な自由競争にはできない」と榎本さんは打ち明ける。

昨年11月から始まった「一木手作り市」(下京区・梅小路公園)

 このため昨年11月から新しい手づくり市を下京区の梅小路公園で始めている。毎月第一木曜日に開催するため、名づけて「一木手づくり市」。「これからは退職した団塊の世代の出店が増えると思う。手づくり市を『中高年の甲子園』に育てて行きたい」と榎本さんは話す。

[京都新聞 2006年2月12日掲載]