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 京都新聞は、観光都市京都のパワーアップを目指して企画「観光・京都おもしろ宣言」をスタートさせました。人々の価値観はいま、物の豊かさから心の豊かさに移りつつあります。京のまちは伝統、歴史、自然環境と、どこを取っても格別な魅力をたたえてきました。京都新聞はそうした魅力に光を当て、京都を元気にする紙面を多彩に展開するとともに、フォーラムやイベントの開催、伝統文化体験の案内など、さまざまな「おもしろ」企画を発信していきます。

四条京町家

観光地、相乗効果狙え

京都伝統産業青年会会長・仁科雅晴氏

京友禅の技法を体験する観光客ら(京都市下京区、四条京町家)

 みなさんは「京都市伝統産業振興館」をご存じでしょうか。あるいは「四条京町家」といえば、思い浮かべていただけるでしょうか。

 ここは、四条通西洞院にある1910(明治43)年建造の町家を再生し、私たち京都伝統産業青年会が伝統産業と文化・教育・観光分野との連携をコンセプトに活動している施設です。伝統産業の活性化を目指し、「触れる・加わる・語る」を積極的に味わう体験型施設として運営しています。

 同館は、町家というしつらえを利用し、伝統産業に関する製品をさりげなくも多彩に展示し、毎日多くの来場者をお迎えしています。しかし、観光施設としては未熟なうえ、社寺を含む他の多くの観光資源の陰に隠れているのが現状です。

 京都は、多くの観光客が訪れる国際観光都市です。観光客が一カ所に連泊し観光するのに退屈させないだけの要素を持った名所旧跡があちこちにある。そうした名所旧跡を一大資源としながら、景観保全に積極的な住民らが全体として一つの輪を形成し、京都の魅力を育てていくことが今後の課題になります。

 「どこかが増えれば、どこかが減る」という入洛者の奪い合い、つまりゼロサム競争で観光スポット同士が争っていてははじまらない。相乗効果による絶対増を狙わなければなりません。資源は有限であり、使うばかりではいつかなくなる。それをなくさないために、京都人としてともに切磋啄磨(せっさたくま)し、強いストーリー性やブランド力を目指すことで新たな資源を生み出していく必要があるのです。

 年間入洛者は、いまや4500万人を突破しています。日本文化の見直しや新たな京都ブームに加え、さまざまなキャンペーンや取り組みが奏功した結果でしょう。特に数年前から始まった京都商工会議所による京都検定のヒットは、予想を大きく超えるものでした。知識欲を刺激する「脳トレ系」トレンドと、「京都ブランド」の知名度によるものでしょうが、1万人に及ぶ人が受検し、しかもその約3割が京都府外の人だったとか。それほど京都は脚光を浴びている。

 京都文化を支えるべき私たち伝統産業の従事者は今後、京都をどう支えるべきでしょうか。年齢層が高く、後継者問題を抱える一方で、就労希望者がすべて思い通りの職種につけないという側面もある。根本的には、文化に対する理解者の減少が需要の減少を招いているという実情を転換せねばなりません。

 最近は地元の学校で伝統工芸の体験を取り入れた授業が行われるようになりました。業界団体の催事としても同様の取り組みを進めています。伝統産業をアピールすることにより、伝統の理解者を増やすのが狙いで、今後その必要性はさらに高まるでしょう。

 また、そうした理解者の期待にこたえるためにも、私たちのセンスや技術の向上という自主努力が不可欠なのは言うまでもない。伝統への理解者が増えれば、入洛者の増加、リピーター化へつながるのですから。

にしな・まさはる 1968年京都市生まれ。大学卒後、金属工芸の家業に従事。旗の錺(かざり)金具や祭礼具を中心に、エクステリア関連の建築金物も手掛ける。平成16年度から京都伝統産業青年会会長。

[京都新聞 2006年3月28日掲載]