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 京都新聞は、観光都市京都のパワーアップを目指して企画「観光・京都おもしろ宣言」をスタートさせました。人々の価値観はいま、物の豊かさから心の豊かさに移りつつあります。京のまちは伝統、歴史、自然環境と、どこを取っても格別な魅力をたたえてきました。京都新聞はそうした魅力に光を当て、京都を元気にする紙面を多彩に展開するとともに、フォーラムやイベントの開催、伝統文化体験の案内など、さまざまな「おもしろ」企画を発信していきます。

英文地図

外国人におもてなしを

京都ホスピタリティ研究所代表・友澤弘氏

「王朝の舞」を楽しむ外国人観光客ら(京都市左京区、下鴨神社)

 京都の「おもてなし」つまりホスピタリティーは最高といわれるが、外国の訪問者が一人歩きしながら京のよさを満喫するには、まだ多くの配慮が必要と思う。

 まず充実したいのは、英文の京都地図と食堂の英文メニューである。欧米人からの個人旅行者が京都を楽しむには地図が不可欠だ。ところが、日本人なら簡単に手に入る地図も、外国人にとってはなかなか難しい。ホテルや旅館は、英文地図を提供する体制が整いつつあるが、急増する日帰り客は、京都駅九階にある案内所にたどり着くだけでも大変だ。京都府・京都市、市観光協会の英文地図は充実してきたが、さらなる供給体制の強化が望まれる。

 最近、宿泊業界に新しい動きが出てきた。外国人宿泊客の多いジャパニーズイングループ、全日本シティホテル連盟、バックパッカーズホテルズ(仮称)の京都の有志がそれぞれ共同して、安価な一、二色刷りの実用的な英文地図を作り、それまでの地図不足を解決した。また、京都駅八条口で外国人への案内業務に当たるボランティアグループ「京都SGGクラブ」も自らの基金で一色刷り地図を作っている。

 これらの地図は、距離が正確で、トイレや大きな建造物の入り口も示され、ローマ字と日本語が併記されている。ホテルが独自に作成している地図には、距離が不正確だったり、ローマ字だけの記載だったり(道を尋ねられた日本人にわかりにくく、外国人も漢字を確認したい場合がある)、歩く観光に役立たないものもある。

 京都市はいま、外国人に地図を持って市内を歩いてもらい、意見を地図作りに役立てようとしているが、大いに評価したい。バブル時代、京都のあるホテルが地図と名所旧跡案内を七ヵ国語で別々に作成し、客に提供していた。自国語の案内を読むうれしさは格別のようで、海外でも評判になった。こんな案内が復活すれば、ホテルだけでなく、京都の評価が高まるだろう。

 四年前、サッカー・ワールドカップの観戦に来た外国婦人が、「何を食べてよいか分からず、毎日ハンバーガーを食べている」と嘆いていたのを思い出す。京都は料理がおいしくバラエティーに富んでいる。しかし、外国人観光客が多く降り立つ京都駅でも、料理サンプルの横に英語を併記している食堂は少ない。店長に聞くと「本社に進言しているが、何もしてくれない」との返事。駅の食堂なら、開業時に英文メニューなどを義務づけるべき、とまで思う。

 このほど京都市と京都商工会議所の努力で、料理用語の英訳データベースが出来上がった。ただし、英文メニューを店内に用意しているだけでは不十分で、ショーウインドーでも英語を併記し、外国人客に積極的な店だと分かるようにしてほしい。ラーメン店や居酒屋など気軽に入れる店は特に奮起してほしい。

 おもてなしの精神は異文化との交流から発達した。バブル時代に流行した「もうけてなんぼ」ではなく、人とのつながりに役立つとの誇りを持っていきたいものだ。

ともざわ・ひろし 1935年生まれ。関西学院大卒。リーガロイヤルホテル大阪の企画、宿泊、宴会部門を経て、リーガロイヤルホテル京都支配人、京都センチュリーホテル総支配人を歴任。91年ドイツ政府リボン功労十字賞受賞。

[京都新聞 2006年4月4日掲載]