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 京都新聞は、観光都市京都のパワーアップを目指して企画「観光・京都おもしろ宣言」をスタートさせました。人々の価値観はいま、物の豊かさから心の豊かさに移りつつあります。京のまちは伝統、歴史、自然環境と、どこを取っても格別な魅力をたたえてきました。京都新聞はそうした魅力に光を当て、京都を元気にする紙面を多彩に展開するとともに、フォーラムやイベントの開催、伝統文化体験の案内など、さまざまな「おもしろ」企画を発信していきます。

町並みづくり

未来都市への転換を

京都府立大助教授・宗田好史氏

ビルの合間に社寺や町家が見える京の町並み(京都タワーから)

 京都市がいま、新しい景観行政に取り組んでいる。従来の市街地景観条例が国の「景観法」として全国に普及、市も京都市景観計画を策定し、景観重要建造物指定も始まった。新境地を開くため、都心の高さ規制の見直しやデザイン基準の見直しも始まる。

 京町家と町並みの継承に向けた本格的な規制見直しは全国初、広大な範囲に詳細なデザイン基準の適用も初めてといっていい。景観で全国の先端を走る新たな景観行政に期待したい。

 景観論争も、町家問題も、都市計画の矛盾が原因だった。1971年当時の風潮では、都心は高層ビルが建ち並ぶという予測の下に、膨大な商業地域に容積率700%、高度45メートルと定められた。35年後の現在、高層ビルは3分の1も建っていない。幸い京都は東京にはならなかった。経済力の差もあったが、東京とは違う京都を求めた多くの市民、事業者が自制した結果であり、町家を維持する家族が誇大妄想の誤った計画から京都を守ったのである。

 しかし近年、この矛盾を突くようにホテルや高層マンションが建ち始めた。そこで、これを本来あるべき姿、50年後、百年後の京都の都心像を計画し直す作業がようやく始まった。市民の町家への関心が高まり、経済界も「美観(美感)都市」を提唱、世界の中で時を超え光り輝く京都の未来を思い描く人々は増えている。規制への合意は得られるだろう。

 そのためには、これを都市像の大転換として認識する必要がある。京都はパリやフィレンツェのように歴史、文化、自然の美を表す町並みを誇る街であり、そこに文化と産業経済が発展する。かつて高度成長に乗り遅れまいと古都の衰退を過度に恐れた人々がいた。現代の京都は、人口減少・経済縮小期にも世界的ブランドを発信し続けたヨーロッパの歴史都市をモデルとしつつ、それらをしのぐ街にするのである。未来に京都が生き残るためには、美しい町並みが要る。半世紀の間に壊した街を美しくする作業に力を結集したい。

 京料理はその伝統と斬新さで世界を席巻している。宗教界は心の時代に生きる現代人に応え、京都は信仰から平和を説く中心地となろう。そして伝統工芸は和のテイストを発信しファッションをリードする。京都が伸びていくために求めるべき都市像は変わった。過去の追憶だけでなく、京都の未来に美しい景観が求められている。

 この機に、17の社寺が登録されている世界文化遺産の追加登録をも目指してはどうか。大徳寺や知恩院など名刹だけでなく、琵琶湖疏水など産業景観の登録も含める。近年の先進国の登録内容を見れば、西陣の町並みや祇園祭の山鉾町にも十分その価値がある。京都の全体像を世界に訴え、現代に生きる古都の風格を世界に発信する遺産追加登録が望まれる。

 国内は京都ブーム、世界は日本ブームである。京都議定書以来、京都のイメージも変わった。街の風格が光り輝く京都を創造していきたい。

むねた・よしふみ 1956年浜松市生まれ。法政大大学院、ローマ大大学院修了。京都大で工学博士。国連地域開発センター主任研究員などを経て93年から現職。国際記念物遺産会議委員、京町家再生研究会理事。専門は都市計画。

[京都新聞 2006年5月9日掲載]