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 京都新聞は、観光都市京都のパワーアップを目指して企画「観光・京都おもしろ宣言」をスタートさせました。人々の価値観はいま、物の豊かさから心の豊かさに移りつつあります。京のまちは伝統、歴史、自然環境と、どこを取っても格別な魅力をたたえてきました。京都新聞はそうした魅力に光を当て、京都を元気にする紙面を多彩に展開するとともに、フォーラムやイベントの開催、伝統文化体験の案内など、さまざまな「おもしろ」企画を発信していきます。

京野菜の観光力

体感型の農園で身近に

「新京野菜の会」会長 石割照久氏

ビタミンCが豊富な新京野菜の「京てまり」(京都市南区)

 九条ねぎなど多種多様な京野菜を先祖代々育てていますが、近年、京野菜が全国ブランドになるにつれ、視察や修学旅行生の農業体験などを受け入れるケースが増えました。京都の農業に関心を持たれる方が想像以上に多いと痛感しています。

 海外からも多くの方が視察に来られ、細かく説明を求められます。欧州連合の関係者からは「大規模栽培ではないが、消費者とのつながりを大切にした農業をされている」との評を頂きました。オーストラリアの家庭科の先生は「栽培に手間をかけるのでおいしいのですね」と感激されていました。

 京都は日本文化の中心で、さまざまな情報の発信地でもあります。社寺仏閣はもちろん、茶道や華道、工芸品、京料理など全国から注目を集める観光資源が豊富ですが、農業もその一つでありたいと思っています。ただ、京都の農業の未来を考えれば、古き良き伝統は残しつつ、新しい農業スタイルの創造も必要です。伝統を守るだけでは何事も先細りしていく懸念があるからです。

 市内農家の有志で5年前につくった「新京野菜の会」では、京都市や京都大と連携して新しい京野菜作りに挑んでいます。ビタミンCが普通のトマトの2倍もある新種トマトの「京てまり」や唐辛子の葉を摘む葉物野菜の「京唐菜」などはすでに本格栽培しており、他府県にない独自の野菜として人気を呼んでいます。

 さらに個人的な発想ですが、京野菜をもっと身近に体感してもらえる新しい観光農園が京都にできれば面白いと思います。観光客に京野菜の収穫を体験してもらい、その野菜でおばんざい作りも楽しんでもらう。「みず菜とお揚げの煮物」など簡単な料理でも、自分で収穫した野菜を使えばおいしさも増すはずです。

 もちろん野菜作りには日数や手間暇がかかりますが、それを逆に利用し、春夏秋冬といった年間を通じたツアーなどを企画すれば、京都に何度も来てもらえるリピーター確保にもつながります。京都に度々来られない人にも、例えば京野菜の苗だけを植えてもらい、後日、大きく育った野菜を自宅に届ける京野菜のオーナー方式を導入すれば楽しんでもらえるのでは。

 講師となる農業関係者にとっても消費者と交流ができ、新しい農業のイメージを持つことができる好機になるはずです。

 さらに夢をふくらませると、最近、ビルの屋上緑化が進んでいますが、そこで京野菜を育ててみてはどうでしょう。「京都議定書」が生まれた環境のまち・京都で、ヒートアイランドや地球温暖化を防ぐ屋上緑化を進めるのは当然ですが、そこで京野菜を育てればアピール性が増します。

 屋上緑化すべきビルは、京都駅前やまちなかに多く、そこで京野菜が栽培できれば、収穫体験を希望する観光客にとっても利便性が良く、一石二鳥です。もちろん、京都の人たちにも、地元の農業をより知ってもらう場になり、最近はやりの「食育」にもつながるのではないかと考えています。

いしわり・てるひさ 1957年、京都市生まれ。大阪学院大卒。市内の生産設備会社に勤務後、87年から農業を継ぐ。元京都伝統野菜研究会会長。現在は新京野菜の会会長や京都市中央卸売市場「食の拠点機能充実戦略委員会」委員を務める。京都市南区在住。

[京都新聞 2006年8月15日掲載]