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 京都新聞は、観光都市京都のパワーアップを目指して企画「観光・京都おもしろ宣言」をスタートさせました。人々の価値観はいま、物の豊かさから心の豊かさに移りつつあります。京のまちは伝統、歴史、自然環境と、どこを取っても格別な魅力をたたえてきました。京都新聞はそうした魅力に光を当て、京都を元気にする紙面を多彩に展開するとともに、フォーラムやイベントの開催、伝統文化体験の案内など、さまざまな「おもしろ」企画を発信していきます。

観光をビジネスで

経済効果で都市づくり

ワックジャパン代表・小川美知氏

京の家庭を訪ね、いけばなを体験する外国人観光客

 私たちが京都で、外国人観光客に日本文化を伝える活動を始めて9年になります。活動の柱は、一般家庭へ外国人をお連れし、そこで茶の湯やいけばな、書道などを体験してもらう独自のプログラムです。

 まず、着物姿のアテンド(案内係)がホテルへ迎えに行きます。茶道や華道など日本文化や京都について、講座を受けて一定の知識を持ち、それを英語で説明し、体験のお世話ができることがアテンドになる条件。受け入れ家庭は、知り合いの紹介などを通じて探した比較的京都の中心部から近く、日本的なお住まいの方に協力してもらっています。

 このプログラムは、私の海外での経験がベースです。夫の留学で欧州に滞在していたとき、現地の家庭に招いてもらい、生活を通じてその国の文化に接することができたのが大きな喜びでした。

 バスで観光地をめぐるツアーもいいですが、より深く日本文化を理解し、日本人と接してもらうにはこの方法が優れていると思います。参加者の満足度は高く、訪問先の家庭と参加した外国人がメールを通じて交流を続けているケースもあります。

 活動を始める前は日本語教師をしていましたが、日本語学校の「冬の時代」と重なり、勤めていた学校が倒産。教師仲間との勉強会を発展させ、ワック(WAK=Women's Association of Kyoto)を立ち上げました。仲良し奥さんの集まりではなく、責任ある仕事がしたかったので、「会社の作り方」のような本を見ながら資金を出し合って有限会社にしました。

 最初はトラブル続き。送迎タクシーが道に迷ったり、受け入れ家庭に英語で問い合わせが入ったり、遅刻や突然のキャンセル…。あちこち謝って回るのが今も私の仕事です。

 この活動を全国に広げようと、東京でも同様のプログラムを始めました。質の高い日本文化紹介をしたいということのほかに、こうした活動を観光ビジネスとして成り立たせたいという思いがあるからです。

 欧州の都市などと比べ、日本屈指の観光都市・京都でさえ、町並みの美観は損なわれ、インフラ整備も遅れています。日本の都市を美しくするには、各都市が財政的に豊かになる必要があります。たとえば電柱を撤去し、建物の外観をそろえ、緑を豊かにするには、膨大なお金がかかります。

 戦後、日本は国も個人も豊かになりましたが、自治体は貧しいままです。では、どうするのか。その費用を観光客に担ってもらいたいのです。観光にふさわしい都市をつくり維持するには、お金がかかるのですから。その意味で、観光をビジネスとして成り立たせ、税収や雇用を増やすことは非常に重要です。

 逆に、ビジネスとして成立する領域にボランティアが入り込むと、ビジネスチャンスを壊してしまうことがあります。京都の観光資源や文化に誇りを持つなら、それを見たい、知りたいという観光客に正当な対価を求めるべきでしょう。そうすることで、若い人だけでなく、文化を継承している人たちにも仕事の機会が確実に増えます。

 観光の経済効果を、美しい都市づくりや伝統文化の維持継承にうまく回すことができれば、京都の値打ちはもっとあがるはず。せっかくの価値ある京都の観光資源を「国際交流」の美名で安売りするのは、もったいないと思いませんか。

おがわ・みち 1949年、愛媛県生まれ。同志社女子大大学院中退。フランスなど欧州滞在を経験、日本語教師を経て1997年に設立した有限会社WAK JAPANの代表に就任。京都市国際観光客誘致推進協議会メンバー。

[京都新聞 2006年9月5日掲載]