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 京都新聞は、観光都市京都のパワーアップを目指して企画「観光・京都おもしろ宣言」をスタートさせました。人々の価値観はいま、物の豊かさから心の豊かさに移りつつあります。京のまちは伝統、歴史、自然環境と、どこを取っても格別な魅力をたたえてきました。京都新聞はそうした魅力に光を当て、京都を元気にする紙面を多彩に展開するとともに、フォーラムやイベントの開催、伝統文化体験の案内など、さまざまな「おもしろ」企画を発信していきます。

町家の利用

家主側も意識改革を

日本賃貸住宅管理協会京都府支部長・吉田光一氏

不動産業者が改装し、滞在型観光客らに短期で貸し出していた町家(京都市北区北大路通堀川西入ル)

 京都市北区で不動産業を営んでいます。3年前に本店西側の古い2階建ての町家を改装し、滞在型観光客らに7日以上で貸し出すサービスを始めました。すると、インターネットで知ったという関東在住の中高年のご夫婦や外国人の方々が次々と借りてくださいました。

 家賃は1週間7万円もしくは1カ月18万円からと決して安くはありませんが、例えば2人で1カ月借りると1日あたり1人3千円です。布団なども付けていますので「ホテルより安い」と好評を得ました。この町家は今夏に長期で貸してしまったので、このサービスは現在停止していますが、「京都の町家に住みたい」というニーズが中高年を中心に予想以上にあることを痛感しました。

 住宅統計調査によると、京都市内には2003年度で10万7千戸の空き家があり、このうち賃貸住宅が5万1千戸です。今後、人口減が進めば、京都でも空き家の増加が懸念されます。そこで、これらの空き家を滞在型観光客や移住希望者の受け皿として活用してはどうでしょう。

 特に町家が残る地域は地蔵盆など昔ながらの行事が今も残り、それらを通して地域のつながりが健在です。滞在型観光客は楽しく、移住者も安心して暮らせるでしょう。

 他府県に限らず、京都郊外に住む中高年の方々でも老後に備え、まちなかに移住を希望されている方が多いと思います。そのような方々の移住も進めることで郊外の広い住宅が空き、今度はそこに広い住宅を必要とする子育て世代が入る。そんな好循環ができれば、京都経済の活性化にも役立つのではないでしょうか。

 京都は「学生のまち」ですから、学生に活用してもらうのも手です。すでに当社と京都造形芸術大が協力して古い木造アパートを改修し、共有のアトリエやキッチンのある個性的な「下宿」として学生に提供しています。全国どこにでもあるワンルームマンションより京都らしい下宿に住み、大学生活を思い出深く過ごしてもらう方が京都への愛着も深まるでしょう。

 もちろん空き家には傷みが目立ち、すぐには使えない物件も少なくありません。そんな中、今年6月に「住生活基本法」が施行され、住宅の供給社会から「いいものを手入れして長く使う」社会への政策転換が打ち出されました。今後、町家の改修や耐震補強がしやすくなる行政施策の推進が期待できます。民間でも町家の不動産証券化など新しい手法で町家の景観を後世に伝える動きが始まっています。

 賃貸住宅の場合、家主側の意識改革も必要でしょう。以前は借家法のなかの正当事由により、いったん貸すと、借り手の権利が強く、契約期間満了後も一方的に立ち退きを求めることが難しかった。このため、トラブルを嫌がって空き家のまま放置している家主も多くおられました。しかし、2003年の借家法の一部改正で「定期借家契約」が施行されることで、契約満了になれば明け渡しが可能になった。また、短期間の契約も認められるなど環境は変わっています。

 ぜひ、この「定期借家制度」を利用した空き家の活用を進め、京都の良さを多くの人に伝えたいものです。

よしだ・こういち 1950年生まれ、神奈川県出身。神奈川県内の県立高校を卒業後、アジアやヨーロッパを外遊。1974年に京都市北区で不動産業「フラットエージェンシー」を創業した。2005年から日本賃貸住宅管理協会京都府支部長を務める。

[京都新聞 2006年9月19日掲載]