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 京都新聞は、観光都市京都のパワーアップを目指して企画「観光・京都おもしろ宣言」をスタートさせました。人々の価値観はいま、物の豊かさから心の豊かさに移りつつあります。京のまちは伝統、歴史、自然環境と、どこを取っても格別な魅力をたたえてきました。京都新聞はそうした魅力に光を当て、京都を元気にする紙面を多彩に展開するとともに、フォーラムやイベントの開催、伝統文化体験の案内など、さまざまな「おもしろ」企画を発信していきます。

脱マイカー観光

渋滞なく過ごせる街に

立命館大経営学部教授・土居靖範氏

マイカーやバスで渋滞する観光地周辺の道路(京都市東山区)

 観光シーズン中、京都市と観光地周辺部の道路渋滞はいわば極限状態となる。市民が「京都の観光」で真っ先に思い浮かべるイメージは「交通渋滞」であると言われるほどだ。

 マイカー観光客は、移動や駐車場探しに多くの時間を取られる。観光のための時間が減り、行きたい所に行けない。その結果、満足のいく観光ができず、京都にまた来たいという気持ちになれない人が多いというデータもある。

 市民や観光客の利用する路線バスも渋滞に巻き込まれがちで、いつ目的地に着くか分からない上、バスの車内はすし詰め状態で悲惨だ。これらはすべて観光地の宿命とあきらめなければならないのだろうか。

 ウィーンやブザンソンといった歴史都市では、都市を取り囲む城壁の内側にマイカーを入れず、路面電車やバス、地下鉄の公共交通機関に乗り換えて入ってきてもらうシステムをとっている。「定時性を持たせた公共交通機関」に加え、郊外の駐車場にマイカーを止めてシャトルバスなどで観光地に入る「パーク・アンド・ライド」、そして時間限定で歩行者天国を設け、公共交通のみ通行させる「トランジット・モール」の3点セットを構築して渋滞緩和に取り組んでいる。

 国内の観光都市でも、金沢市では高速道路の出口に広大な駐車場を開設。シャトルバスの本数を増やした上でバス専用レーンを順守させ、積極的にパーク・アンド・ライドを展開している。観光客や地元住民から「マイカーより早く観光地に入れる上、駐車場探しの心配がない」「費用の追加負担も比較的少ない」と評価されており、成功した事例と言える。成功のポイントは、マイカーからバスや電車に乗り換えた方がメリットがあるような仕組みをつくり上げたことだろう。

 京都の主要観光地、嵐山や東山でも、観光シーズンの渋滞対策にパーク・アンド・ライドを実施しているが、うまくいっていない。実施の情報があまり知られていないこともあるが、地元商店や社寺などがマイカー乗り入れ規制に反対していることもあって、マイカーが観光地に多数進入し、渋滞解消につながっていない。

 京都では、年間約4千5百万人の観光客のうち約3分の1がマイカー利用者と推定されている。より根本的に渋滞を解決するには、マイカー以上に魅力的な公共交通を運行させる必要があるのではないか。

 そこで現在、欧米で新しい都市交通の主役として台頭しているLRT(次世代型路面電車)の有効性を強調したい。低床車両で電気エネルギーを使用するため、ヒトと環境に優しい。建設コストは安く、実現が早い。軌道内にクルマを通行させないため、定時運行ができる。バスと違って路線が分かりやすく、安心感がある。車窓の景色を楽しみ、気に入った場所で気楽に乗り降りして観光することができる。

 京都市でも2ルートの導入を検討しているが、なかなか実現の兆しは見えない。交通渋滞を解消し、観光客にも地元の人にも過ごしやすい街にするには、LRTとパーク・アンド・ライドをセットで採用することが急務だと考える。

どい・やすのり 1943年、静岡県浜松市生まれ。青山学院大学大学院修了。専門は交通システム論、観光交通論。交通権学会会長も務める。著書に「LRTが京都を救う」(つむぎ出版)、「交通論を学ぶ」(法律文化社)、「交通政策の未来戦略」(文理閣、近刊)など。

[京都新聞 2006年9月26日掲載]