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 京都新聞は、観光都市京都のパワーアップを目指して企画「観光・京都おもしろ宣言」をスタートさせました。人々の価値観はいま、物の豊かさから心の豊かさに移りつつあります。京のまちは伝統、歴史、自然環境と、どこを取っても格別な魅力をたたえてきました。京都新聞はそうした魅力に光を当て、京都を元気にする紙面を多彩に展開するとともに、フォーラムやイベントの開催、伝統文化体験の案内など、さまざまな「おもしろ」企画を発信していきます。

街の色調

街並み洗練で活性化

京都造形芸術大芸術学部教授・奈良磐雄氏

将軍塚(京都市山科区)から見た京都市内

 私は京都の街の色について調査・研究を行い、京都の都市文化の向上を目指す市民団体「街の色研究会・京都」のメンバーとして活動している。景観は、そこに住む人々の美的感性の集積とも言える。景観を変えるのは、服を着替えるように簡単にはいかないが、住民一人ひとりが向上心を持ち、時間をかけて取り組めば必ずできる。

 街の色の現状を確かめるため、今年1月半ばの朝、将軍塚大日堂(京都市山科区)境内にある展望台に立った。西の愛宕山、冠雪でうっすら白くなった北山の峰々、比叡山から手前の東山に至るまでの三方を山に囲まれた盆地に、京都市街が箱庭のように横たわる。京都の大景観を構成する空、山並み、川、道路、ビル群、公園、民家の屋根などすべてが朝もやに包まれ、グレーのベールをかけたようにしっとり落ち着いた色調だった。平安京が造営されたころも、1200年の時を経た現在も、朝もやにおおわれた大景観の色調はほとんど変わらないだろうと思えた。

 やがて日が射してもやが晴れると、ピントが合った風景写真のように景観の構成要素の形、色彩がはっきり見えてきた。市街地ビルの色調は全体的に少し色味のある明るめのグレー基調のものが多く、中でも新築ビルの色調は古くからのものより一段と鮮やかさを抑え、単調になりがちな壁面には凹凸による陰影を持たせている。全体的に落ち着いた色調の風景になってきている一方、それらとは対照的に明るく鮮やかな色調のビルもいくつか存在し、全体のイメージが損なわれている。それらが何なのかを詳しく見るため、中景観を構成する市街地中心部に移動した。ひときわ違和感を放っていたものの正体は、ビル工事現場の囲い布、立体駐車場や窓のない箱状ビルの巨大壁面、大型看板などだった。

 触れられる距離にある小景観では、派手な色調の看板や自動販売機、宣伝用のぼり旗などの乱立が目立つ。中心部繁華街では他店との競争に勝つため、より派手に、より大きく、より多くとの「仁義なき戦い」が激しさを増し、その目的効果を相殺してしまっているとともに、住む人や訪問する人に不要な疲労感を与えている。

 今まで京都市の景観への取り組みは、三山周辺の風致地区に重点が置かれてきた。21世紀はいよいよ、人間と街との関係が複雑に絡み合った市街地中心部の「仁義なき戦い」にも大ナタがふるわれる。地域が一体となった新たな秩序創出、リノベーションを行う好機だ。このリノベーションに秩序ある色彩作法を取り込み、街の色合いに統一感を持たせれば街並みは洗練され、周辺三山を含む京都全体の景観価値は格段に向上するのではないか。

 そこで、京都ならではの街並み景観色「京都カラー」を創設し、街の色調をある程度、統一してみてはどうだろう。より洗練された新しい京都の姿を確かめようと観光客が訪れ、活性化につながることは間違いない。また、カラー創設にあたって市と市民、市民団体が共同参画することで、市民の間に景観への意識が高まる。景観、街づくりについて共通の価値観にたどり着くころには、京の街は都市としての成熟度をますます上げていることだろう。

=おわり

なら・いわお 1947年、京都市生まれ。藤川デザイン学院卒業。京都芸術短期大学(現・京都造形芸術大)教授などを経て95年から現職。京都の都市景観を色彩の側面から調査、研究する市民団体「街の色研究会・京都」会員。京都デザイン協会副理事長なども務める。

[京都新聞 2006年2月15日掲載]