|
第9回世界湖沼会議を前に | |||
|
研究交流 −水生生物研究所(イタリア) | |||
「今後十年間に、具体的な保全策を進めなければ世界の水環境は危機的な状況になる」。リカード・ベルナルディ所長(54)は、汚染が進む世界の湖沼環境に危機感を示し「改善には研究者の果たす役割が極めて重要になっている」と強調した。 同研究所は、「湖沼研究に役立ててほしい」と、建物を所有者が国に寄贈したのがきっかけで生まれた。工場排水の影響で生物が絶滅した北イタリアのオルタ湖の水質改善に成功するなど、国の環境保全策の立案にも大きな役割を果たしてきた。 レンガ色の外観が鮮やかな三階建ての建物には、最新の分析装置を備えた研究室や、各国の資料がそろった図書館、国際会議の会場にもなった会議室などがある。設立以来、研究者の育成にも重点を置いているため、若い研究者も多い。 ベルナルディ所長が、研究者の使命の重さを強調するのは「環境が、政治、経済、生活など社会のあらゆる部分に影響を与え、人類の未来を左右しかねなくなっているからだ」という。「人間の生存に欠かせない水資源の汚染が、途上国を中心に進んでいる。今後、国家間で水をめぐる争いが起こる可能性もある」と危ぐし、「研究者は水質汚染を早期に食い止める指導的役割を果たしてほしい」と話す。 同研究所では今年から、研究分野を地球全体に広げ「環境体系研究機関」としても動き出している。エベレストにも研究地点を設け、人為的汚染の影響を受けないエベレストの湖の調査を行い、地球レベルで環境や生態系の変化を研究する計画だ。ベルナルディ所長は「環境問題に国境はない。だからこそ、国を超えた研究や協力が欠かせない」と強調した。 こうした研究所の考えも受け、同研究所での研究者の交流は一段と活発になっている。取材時には、アルゼンチン、米国、カナダ、ロシア、ネパールなどから訪れた約二十人の研究者が滞在し、水質や含有物質の研究など湖沼学の基礎を実地で学んでいた。帰国後は母国の研究機関などに所属して、それぞれの国の湖沼が抱える問題と取り組む研究者が多いという。
ハンガリーの国立バラトン陸水学研究所のサンダー・ヘロディック所長も「国によって制度や考え方の違いが大きいことが、環境回復に向けた各国間の意識の温度差を生んでいる」とし、国境を超えた研究者の連携の重要性を指摘する。「研究者の協力で、各国の湖の状態について共通認識を確立できれば、国際協力を実現する足がかりになる」と訴える。(おわり)
▲INDEX▲ | |||