日本のスポーツもようやく、根性論一辺倒から、科学的なトレーニングの重要性や、合理的な指導論に目を向ける時代になりました。しかし、まだまだ思い込みや、もっといえば誤解されていることが多くあります。スポーツを体験した医師の一人として、「スポーツ障害の正しい知識をもってスポーツを楽しんでほしい。より高いレベルを目指す人には、思わぬ怪我で断念することなくトップになってほしい」と願い、お話をさせていただきます。

<プロフィール>
古川 泰三
1989年、京都大医学部卒。現在、京都警察病院 整形外科部長。医学博士。整形外科専門医。日本体育協会公認スポーツドクター。日本整形外科学会スポーツ医。日本整形外科学会脊椎脊髄病医。ドーピングコントロールオフィサー。
2005年から、スケート・アイスホッケー国体の京都府チーム帯同ドクターを務める。京都大在学中は、アイスホッケー部で活躍、今もクラブチームで(時々)プレーしている。
腰椎分離症(ようついぶんりしょう)について
発育期のスポーツ選手の腰痛でしばしばその原因になっているのが、腰椎分離症という病気です。背骨のなかで腰の部分を腰椎といいますが、この病気では腰椎の一部分で骨の連続性が途切れた状態になります(図1)。遺伝的な素因も考えらますが、最近では疲労骨折であると考えられています。一般人より若いスポーツ選手に高頻度で認められています。一般の発生頻度が4〜6%であるのに対しスポーツ選手では8〜15%といわれています。サッカー、体操、陸上競技(特に投てき競技)、野球、バレーボールなどに多く認められます。腰を後屈(うしろに反る)や回旋(ひねる)の動作の繰り返しで骨のこの部分にストレスがかかるのが原因です。



治療は分離部が癒合(ゆごう:この場合骨同士がひっつくこと)する可能性があるかどうかで若干違ってきます。分離部の癒合が期待できる早期の場合や片側だけ分離している場合は癒合を目標に治療をすすめます。コルセットをつけて数カ月のあいだスポーツを中止しなければなりません。痛みがなくなってもしばらくはコルセットをつける必要があります。一方、分離症が進行しており癒合の見込みの低い場合は安静により痛みがとれると徐々にスポーツ活動に復帰してもらいます。分離は残ったままですが痛みがとれればスポーツ活動はできます。
腰痛にかぎらずスポーツ障害全般に言えることですが、最初に接骨院に行く人が多くいます。どこにいっていいのかわからないから接骨院に行く人もいます。しかし正確な診断は整形外科でないとつきません。早く診断をつけて早くから適切な治療をすることがスポーツの早期復帰には重要です。
参考文献 1)EBMスポーツ医学 西村書店
2011年のコラム
2010年のコラム
2009年のコラム