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西村さんの後輩、葛野さんのヨットライフ紹介

操船する西村さん(左)と葛野さん
操船する西村さん(左)と葛野さん

 「四国一周クルージング」の続編として、葛野さんのヨットライフを紹介しよう。2007年10月5日、私は、西村さんと葛野さんにご招待いただき、新西宮ヨットハーバー(兵庫県西宮市)を訪問。葛野さんのクルーザーで大阪湾に乗り出した。デッキで聞かせてもらった「充実の第2の人生」とは―。

 葛野さんは1945年に広島県福山市で生まれた。京都市に本社を置く「オムロン」時代は、欧米の7つの都市で働き、2005年6月に執行役員常務として退職。ちょうど1年後にドイツ製の33フィートの中古クルーザーを購入した。ヨットの経験はまったくなかったが、仕事の関係で、欧米のヨットライフを長年見てきて、「仕事をリタイヤしたら、海と親しむヨット生活を」と考えていた。

 そのための準備は、コツコツと進めていた。会社の長期休暇制度を利用して、小型船舶免許も取得、周囲にいたヨットマンたちから情報を集めた。クルーザーは、国産の中型乗用車2台分ぐらいの値段で購入した。新西宮ヨットハーバーは設備が充実しており、全国の中でもトップクラスだ。クラブハウス、メンテナンス体制が整い、何より自宅から車で30分ぐらいという便利さがいい。

 海を楽しむために、会社の先輩であった西村さんの存在が追い風だった。ヨット購入後、その年の10月には、兵庫県赤穂市へ1泊クルージング、2007年8月には淡路島へ、そして、このホームページで紹介している四国一週と、いずれも西村さんが同行した。西村さんは「私なんか、学生時代から本当に長くヨットをやってきたので、どこかおおざっぱなところがある。葛野君は、几帳面な性格もあって、慎重で研究熱心なところがいい」と、『60の手習い』で急速な進歩を見せる後輩をほめる。

舵を取らせてもらったホームページ筆者の井上
舵を取らせてもらったホームページ筆者の井上

 ヨットというと、夏が似合うように思うが、居住性に優れた33フィートのクルーザーともなると、まさにオールシーズン付き合える。葛野さんも、冬場は、桟橋から電気をヨットキャビンに引き込み、電気ストーブで暖を取りながら、好きな音楽と読書を楽しむ。春、秋に良い風があると、気の向くままのクルージングだ。セールを上げて、風をつかんだ瞬間、ヨットに命が吹き込まれる。心地よい加速感。ヒールした船体が出す5、6ノットのスピードは、時速10キロ前後だが、海の上では結構速い。ふと、「このままどこまでも航海したい」と思うほどだという。

 さて、現実的な話も。年間維持費は約100万円。これを、どう稼ぎ出すか。葛野さんは、会社時代の知識を生かしてさまざまに工夫する。そんな苦労をしても、ヨットライフの充実感は、他に代え難い魅力があるという。「僕のヨット」がいつの間にか「ヨットの僕」になる。「それもまた良し」と思える心の余裕が、第2の人生を豊かにしてくれるのだろう。


 大阪湾のミニクルージングはあっという間だった。少し、操船体験もさせてもらった。葛野さんも、西村さんも、かつての企業戦士の面影を残しながら、海を、ヨットをこよなく愛するおだやかな横顔が印象的だった。