京都新聞社TOP

メキシコ五輪銅メダル 1968(昭和43)年 日本サッカー協会名誉副会長 釜本邦茂さん

(6・完)常にシュート意識 徹底を

サッカーで得た経験を学生たちに伝える釜本さん(宇治市・京都文教大)
サッカーで得た経験を学生たちに伝える釜本さん(宇治市・京都文教大)

<2006年、京都文教大の客員教授に就任した。自らのサッカー人生で得た豊富な経験を学生たちに伝えている>

 チームゲームの中で、今の若い人たちは自分の役割を本当に分かっているだろうか。サッカーではゴール前にボールを放り込む役、点を入れる役、ヘディングで競る役など、さまざまな役割がある。僕は点を取らなければいけなかった。そのために一生懸命、自分の練習をした。そうすることで自信もわいてくる。

 シュートでも、ドリブルでも絶対というものを持っておくべきだ。得意技は三つも四つもいらない。一つでいい。たとえば、剣道でメン打ちの得意な選手がいれば相手はそれを警戒する。その裏をかけば攻撃の幅が広がる。

<来年6月に開催される南アフリカワールドカップで日本代表はベスト4進出を目標に掲げる。長年の課題である得点力不足を解消できるか。五輪の得点王は独自のストライカー論を展開する>

 メキシコ五輪のメンバーは身分はアマチュアだったが、意識はプロと変わりはなかった。根本的に負けたら腹が立つという人ばかりで個性的だった。いま、日本のサッカーには個性ある選手が見当たらない。組織で守るディフェンダーとは違って、フォワードはわがままでいい。でも協調性もないといけない。「おれが、おれが」と思うだけではつまはじきにされる。反発を食らわないように全員を理解させないといけない。偉そうに言ってもゴールという結果を示さなければ駄目。ただ、自分の力だけで得点したという態度はとってはいけない。

 サッカーで勝つために必要なのは点を取ることです。そのためにはシュートを打たなければならない。何回トライするかだ。1試合にチームが15本シュートを打てば、10本は僕だった。外れたら仕方ない。失敗したらどうなるだろうと不安に思っていたらシュートは打てない。ペナルティーエリアに入ったら敵がいようが関係ない。フォワードの役割はシュートを打つこと。パスをするという選択を優先する必要はない。

 フォワードはゴール前でどれだけのことができるかに尽きる。自分はパス練習でも何気なくけるのではなく、シュートをする意識でけっていた。徹底するためにパスの相手をゴールポストだと思ってけったこともあった。「シュートはパスの延長」とジーコ(元日本代表監督)が言っていたが、それは中盤の選手の考え。僕は「シュートの延長がパス」だと考えた。

<あなたのようなストライカーは日本に再び出現すると思うか。その質問に、少し考えて「出ないでしょう」と言った>

 自分が生涯で挙げたゴールの内訳は右足が50%、左足が25%、頭が25%ぐらいの割合だった。僕みたいに体も大きくて両足でけれる選手は、そう簡単には出てこないだろう。

<万能のストライカーにはどうしたらなれるのか>

 僕みたいなストライカーをつくろうとすることはむしろ間違いなのかもしれない。ただ、点を取ることだけからいえば、僕を超える選手は出てくるかもしれないが…。

(2009年12月16日付け紙面から)