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寝技の粋 継承に情熱故・京大柔道名物OB 遺志沿い大学に6000万円

生前の長谷川さん。寝技への情熱を寄付の形で京都大柔道部に託した
生前の長谷川さん。
寝技への情熱を寄付の形で京都大柔道部に託した

 京都大柔道部OBで2005年4月、92歳で亡くなった長谷川繁夫・元岡山大理学部長(京都市左京区)の遺族が本人の遺志に沿って遺産約6千万円を京都大に寄付した。京大では旧制高校以来の寝技重視の「高専柔道」が行われており、長谷川さんは自ら道場に立ち続け「高専柔道」と寝技の継承に情熱を注いでいた。柔道部では「名物OB」長谷川さんの思いを引き継いで、OBらによる「長谷川繁夫寝技振興会」を立ち上げ寄付の活用方法を検討している。

 長谷川さんは1912(明治45)年、京都市上京区に生まれた。旧制京都一中(現洛北高)で柔道を始め三高を経て京大へ。卒業後は岡山大教授の傍ら中国四国学生柔道連盟会長も務めた。退官後は京都に戻り晩年は連日、柔道着姿で母校の学生たちの指導に当たり、熱心な指導が尊敬されるとともに恐れられていたという。亡くなる直前まで道場に通っていた。

 長谷川さんは子供がなく、妻に先立たれていたこともあり、生前から親族らに寄付の意向を伝えていた。親族も遺志を尊重し、05年11月に遺産の一部が大学へ寄付され、岡山大にも約2千万円の寄付があった。

 京大が継承する「高専柔道」は戦前、旧制の高校や高等専門学校などで盛んに行われていた。日本古来の柔術の流れをくんで寝技を重視し、現在の講堂館柔道と違って寝技への引き込み技なども認めている。

 長谷川さんは生前「寝技しか習ったことがない」と語り、生粋の高専柔道の継承者だった。寝技の再評価に力を注ぎ寝技研究の本も自費出版した。岡山大では寄付を受け、長谷川さんが書きためた原稿をまとめ「続寝技入門」を出版する予定。

 京大柔道部の蘭信三部長は「晩年の先輩は死期を悟ったかのように、寝技への情熱を託すべく寄付の話を進めていたようだ。遺族の方々にも感謝したい。高専柔道の流れをくむ旧七帝大による『七大戦』が来年は京都で開催される。この大会の盛り上げなどに寄付を活用したい」と話す。