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新刊書「ラグビー・ロマン」―岡仁詩とリベラル水脈

「ラグビー・ロマン」

 華々しい活躍、かたくななまでの学生スポーツ追究。戦後の同志社大ラグビーとともに歩んだ岡仁詩さんの人物像を、ノンフィクション作家の後藤正治さんが書き上げた。

 読んでみて「素晴らしい試合を観戦したあとの充実感」を味わった。一人の名指導者の生きざまを通して、「ラグビーとは、試合とは、指導とは、生き方とは」と、テンポよく展開していく。そう、縦横自在にボールが流れる試合のようなのだ。

 「失敗には寛容であったが、他のプレーヤーのことを考慮しない『思いやりのないプレー』には手厳しい叱責が飛んだ」。岡さんとはそういう指導者なのだ。ある試合の最中。スクラムを押し込まれている先輩FWに、後輩が『代わりましょう』とポジションチェンジを告げた。「逆ならありうるでしょうが、言った方も、従った方もえらい」と、リベラルを貫いた指導者も舌を巻くのである。

 緊迫したラグビー論、伝説的な勝負の歴史に圧倒されるが、同志社大の「紺とグレー」のファーストジャージの意外な由来も説明してくれる。ハーフタイムの息抜きが用意されている。

 岩波新書で231ページ。740円。後藤さんは、1946年生まれ。京都大農学部出身。お会いすると学究派のイメージを強く感じる。スポーツ全般、とりわけ、ラグビーへの造詣が深い。