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ラグビーW杯の2019年日本開催へ平尾氏が語る

 ラグビー世界一を決めるワールドカップ(W杯)2019年大会の日本開催が決まった。国内ではラグビー人気の低迷が叫ばれ、代表チームもW杯で過去1勝だけ。10年後の華やかな祭典を成功させるため、選手強化と人気回復に向けたトライ(試み)が不可欠だ。

■黒字運営へ 高いハードル

2007年ラグビーのW杯フランス大会開会式。日本大会でも満員にすることができるか(ロイター=共同)
2007年ラグビーのW杯フランス大会開会式。
日本大会でも満員にすることができるか(ロイター=共同)

 2007年に行われたW杯フランス大会は、国際ラグビーボード(IRB)によると約225万人の観客を動員した。15年W杯を開くイングランドは約280万枚のチケット販売を見込んでいる。19年の日本大会は、会場を満員にできるのか。

 日本ラグビー協会の開催計画では、入場料が収入の大部分を占める。全48試合で平均4万3千人が観戦し、約300億円を得る腹づもりだ。しかし、昨季日本最高峰のトップリーグで最も多く観客を集めた試合でも2万人を超えた試合はなく、黒字運営へのハードルは高い。

 6月に日本で初開催したU-20(20歳以下)世界選手権では、雨がぱらつく中で日本が出ない決勝にも1万1244人が集まった。大会全体での観客動員は10万人を超え盛況で幕を閉じたが、招待券での入場も多数あったと言われている。

 トップリーグでは各チームがラグビー教室や握手会を開催し、ファンとの交流を図っている。地方都市でも試合を行うなど普及活動には熱心で、初年度の03年シーズンに約26万8千人だった観客は、昨季は約38万5千人まで伸びた。

 トップリーグの稲垣純一・最高執行責任者(COO)は「人気を出す特効薬はない。ラグビー経験者以外にもラグビーを見ていただく努力を続ける」と話す。本番までの10年で、どれだけ新しいファンを開拓できるか。大会成功の大きな鍵になる。

■始まる次世代育成

ラグビーW杯で苦戦の続く日本代表。2007年大会も1次リーグ敗退だった=トゥールーズ(共同)
ラグビーW杯で苦戦の続く日本代表。
2007年大会も1次リーグ敗退だった
=トゥールーズ(共同)

 これまでW杯ホスト国が決勝トーナメント進出を逃した例はない。日本は1987年の第1回から6大会連続で出場し、いずれも1次リーグ敗退。開催計画では決勝トーナメントに残るのは8チームだが、日本は最新世界ランキングで14位にとどまる。

 日本ラグビー協会で中長期の強化を担当する岩淵健輔氏は「代表選手の平均年齢は26、27歳で推移している。10年後のW杯で中核を担うのは現在の16、17歳」と話す。次代の代表育成は既に始まっている。同協会は今夏、U-17(17歳以下)の強化合宿を初めて実施。全国から選抜された約200人がU-20日本代表コーチから徹底指導を受けた。

 ジョン・カーワン日本代表ヘッドコーチは「チームを勢いづける若手も必要。今の13~15歳の強化が重要になる」と、さらに若い年代に目を向ける。

 腰に付けたひも(タグ)を取って攻守交代するタックルのない「タグラグビー」が小学生に人気で、全国大会の予選に約1千チームも参加する。競技人口拡大の素地はあるのに、日本協会によると、ラグビー部のある中学は全国に300校余りしかない。日本協会の真下昇専務理事は「小学生と高校生の間が細くなっている。そこを何とかしないと」と危機感を口にする。地域のラグビースクールを含めた中学生選手の受け皿づくりもまた、10年後のW杯成功につながっている。

■挑戦することで感動を -神戸製鋼・平尾誠二GM兼総監督-

平尾誠二GM兼総監督
平尾誠二GM兼総監督

 ラグビーのW杯を選手として3度、監督として1度経験している神戸製鋼の平尾誠二ゼネラルマネジャー(GM)兼総監督(46)=写真=が、2019年大会の日本開催について「挑戦することで感動を与えられればいい」と思いを語った。

 1987年の第1回大会では選手だった。「僕が代表に選ばれた当時はテストマッチが年に数試合。短期間で代表同士が何試合もやるW杯は画期的だった」と当時を懐かしむ。

 過去6度のW杯では、ホスト国はすべて決勝トーナメントに進出している。W杯で1勝しか挙げていない日本代表にとっては高いハードルだ。どのように代表を強化するかがポイントになる。「中学、高校、大学と各年代で指導方法に違いがあるのは当然。でも一貫した方針があればいい」と持論を展開する。

 日本ではラグビーは基本的に企業スポーツで、日本選手のプロ契約を認めないチームもある。だが、海外の強豪国では有望な選手は10代からプロとしてプレーするのが一般的だ。「安定した雇用で将来の不安をなくす、という点はある」としながらも「これから議論が必要」。プロ契約の重要性については認識している。

 開催までは決して平たんな道のりではないが「チャンスと思わないとね」とうれしそうな笑顔が印象的だった。

(2009年8月1日付け夕刊紙面から)