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スポーツマンシップをテーマにシンポジウムを開催

シンポジウム風景
シンポジウム風景

パネリスト
パネリスト

 京都スポーツ文化研究会シンポジウム「スポーツマンシップを考える―ライフスキルプログラムの必要性」(財団法人京都大学コンソーシアム、NPO法人神戸アスリートタウンクラブ主催)が2007年1月21日、京都市下京区のキャンパスプラザ京都で開かれた。

公務員の不祥事、企業の反社会的行為、飲酒運転事故などが後を絶たない昨今、モラルハザード(倫理観の欠如)という言葉がよく使われるようになった。スポーツには、ルールに従い、自己を磨き、対戦相手を尊重する「スポーツマンシップ」という財産がある。

今回のシンポジウムでは、さまざまな立場の指導者や競技経験者が、貴重な提言を行った。

【基調講演】

堀場 雅夫(1924年生まれ。堀場製作所を創業、現在最高顧問。少年時代にはラグビーに親しむ。ベンチャー起業や、京都町づくりなどの論客)

吉田 良治(1962年生まれ。1998年に米国ワシントン大学へアメリカンフットボールのコーチ留学。神戸アスリートタウンクラブ)

【パネリスト】

平井 英嗣(1948年生まれ。アメリカンフットボールの立命館大総監督。関西学生アメリカンフットボール連盟理事長)

多賀 章仁(1959年生まれ。平安高―龍谷大野球部OB。近江高校野球部監督。甲子園は、夏7回、春2回出場。近江高校副校長)

武田 美保(1976年生まれ。アトランタ、シドニー、アテネ各五輪シンクロナイズドスイミングで、銀、銅合わせて5つのメダルを獲得。その後引退)

和泉 修(1962年生まれ。浪速高校―同志社大のボクシング部で活躍した。2000年に同志社大大学院総合政策科学研究科に入学、修了。吉本興行所属のタレント)

【コーディネーター】

横山 勝彦(1954年生まれ。専門は柔道。同志社大教授)

○堀場雅夫氏の講演要旨○

 モラルハザードという言葉は、本来、保険業界の言葉です。しっかり保険をかけたことで、本来あるべき注意力がなくなっていくというような意味です。「倫理観の欠如」という和訳とは少し意味が違います。

 私は、旧制甲南高校(神戸市)という学校で、今でいう中学と高校の一環教育を受けました。「知育、徳育、体育」という3つを徹底的に教育された。全員、何らかのスポーツクラブは入りました。体育です。スポーツはルールに従わなければ成り立たず、そこに徳育があります。試合に勝つには知育が必要です。

 どうも日本人というのは、自分を過小評価する傾向があります。儒教の影響かもしれません。しかし、グロ-バル化した現代では、それでは世界で通用しません。自分の能力を正しく相手に伝えることがますます大切になります。

 人間一人ひとりを大切にしないといけない。そのためには、まず自分自身が楽しく過ごさないといけない。そして、周囲の人を楽しくさせないといけない。こういう考え、行動が、「モラルの基本」だと思うのです。

○吉田良治氏の講演要旨○

 アメリカでは、アメリカンフットボールの有名選手が積極的に、子どもたちに対するボランティア活動を積極的に行います。入院中の子どもたちも訪問する。また、ホームレスへの食事提供などもよくやっています。

 一方で、大学のコーチは、勝つことはもちろん、学生の卒業率を下げないようにすることが義務づけられています。それが実現できなければ、即解雇ということになります。厳しい世界ですが、コ-チは「次のアメリカンのリーダーを養成する」という最大の目標に向かって努力しています。

○パネリストの発言要旨○

平井氏
 日本のスポーツでは、やはり勝利至上主義の弊害ということが目につきます。大学では、学生生活そのものがうまくいかず、スポーツ選手として大成しない場合があります。スポーツは優れた教室といえます。ただ聞くだけでなく、いろいろなことが体験できるからです。

多賀氏
 高校野球でも、指導者による体罰など不祥事が起こります。そうなると、出場停止などの処分がありますし、指導者はもがき苦しんでいるというのが実態です。高校野球は他の年代の野球と違い「高校野球らしさ」が求められるし、大切です。しかし、甲子園という高いレベルの場でも、選手の中に良くない態度が見受けられることがあります。自分自身を律することが大切です。練習方法など、昔と今とでは大違いです。今は、一方的に押しつけるのではなく、子どもたちに納得させて練習をしないといけません。私は『監督は裏切ってもいいが、仲間は裏切るな』と言っています。

武田氏
 シンクロを始めたのは小学校2年でした。体つきが四角いので、水中で演技するときに体の軸がとりやすいから、と言われました。それから、中学、高校、大学を通して一貫教育でした。中学1年のときに井村コーチに教えてもらいました。練習が終わって言われたのは『あんた何歳? 12歳か。 来年引退する選手みたいや。自分を出してない。面白くもなんともない』でした。勝つことのために、小さくまとまってしまっていたんです。引退した今、一番思うことは、選手を終えたセカンドキャリアの問題です。私自身、何も知らないし、これから何をしていいのか分からないときがあります。引退後の選手のバックアップ組織づくりが今こそ大切だと感じます。

和泉氏
 芸人は何をしてもいい、といった時代がありましたが、今は芸人だからこそモラルが求められる時代です。吉本興業には教育機関がありますが、どうもテレビに出ると偉い、と思ってしまう傾向があります。周囲も、テレビに出ている芸人をチヤホヤします。スポーツでは、そういうことではなくて、人と人とのコミュニケーションをもっと大切にして、評価してほしいと思います。