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(19)元NHKの山本浩さんの講演

2011年03月03日

■スポーツでもコミュニケーションが大切

 長岡京市教育委員会と同市体育協会主催の第5回「すくすく健康フォーラム」は2011年2月27日、長岡京市立中央公民館で開かれ、元NHKアナウンサー、解説委員の山本浩さんが「スポーツが持つ無限の可能性」と題して講演した。山本さんは、五輪やW杯サッカーの中継などで活躍、2009年に退職。法政大学教授、日本サッカー協会殿堂委員、日本相撲協会ガバナンス独立委員会委員などを務めている。

 豊富な経験をもとにした講演の要旨を紹介しよう。

山本浩さん
山本浩さん


 スポーツというと、数字で語られることが多い。○年ぶり優勝とか、○年連続出場などは、努力のたまものだが、「見る人」がいればこそ、記録に表れる繰り返しが意味を持つのであり、その数字が意味を持ち、生きてくる。新しいスポーツの時代は、スポーツが好きな人が欠かせないだろう。スポーツを支えるボランティアに報酬を出すとしたら、年間7920億円になるという調査、研究もあるぐらいだ。

講演会風景
講演会風景

 当たり前にスポーツを楽しむ時代でもあるが、国も昨年、スポーツ立国戦略を発表しており、スポーツを「する人、観る人、支える(育てる)人」の連係が大切としている。今、スポーツのプロ化が顕著だが、「プロに似て非なるもの」もある。プロとは、「時間を、もっぱら自ら大切にするもののために使う」人のことをいう。食事一つとってみても、プロは、常に試合で力を出せるメニューであるかどうかを考えている。自分の力を認識しており、信念、主張がなくてはならないのだ。

 文科省は、五輪でメダルを獲得した選手らに海外で勉強してもらう制度をつくっている。柔道の中村行成さんが英国に、ハンドボールの田中茂さんはスペインに行った。そこから日本を見ると、日本の選手は、コーチや先輩に積極的に質問しないそうだ。逆に、日本とは違って、(海外の)コ-チは選手の意見も聞いて、トレーニングに内容を決め、説明するそうだ。スポーツは、古代英語で「家族」を意味するそうで、チームには、ルールとともに、明文化されていない不文律によって成り立っている。

 そのような、コーチと選手の関係でいうと、選手は試合に出たいから練習のときに故障が無く、元気であるように見せようとする。本当は疲れが残っているのに、表に出さない、あるいは興奮状態になっていて表に出てこない。昨年のW杯サッカーのカメルーン戦の前に、選手の状態を尿検査でよく把握していて、ほとんど(過重な)トレーニングをせずに疲れをとることができ、試合で力を出した。

 スポーツの世界でもコミュニケーションが大切だが、今の時代は、スーパーで買い物をすれば(商品を選ぶのにも)会話はない、鉄道も自動改札で会話がない、寿司屋も回転寿司なら、大将に声をいかけることもなくて好きなネタを食べるだけ。コミュニケーション欠乏症ともいえるが、スポーツでも「他人の評価と自分の評価をプラスすることで自信につながる」わけですから、コミュニケーションは大切です。

 昭和24年の古い野球の本に、スポーツの基本として「和やかな気分でプレーすることが大事」と書いてある。プレーヤーは、冷静で、自信を持ち、落ち着いていなければならいということでしょう。指導者たるものは、プレーヤーに対して『自分から進んで指導者に近づいていきたい』という気持ちを持たせるぐらいでないといけない。サッカー元日本代表監督のオシムさんが倒れて入院したとき、代表選手が次々に見舞いにかけつけた。信頼関係の表れだった。

 これからのスポーツは「見て知る、聞いて知る、話して知る」というコミュニケーションが大切です。