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(25)「生涯スポーツのヨット─全日本A級ディンギー選手権」

2012年06月03日

 「生涯スポーツ」は、新しい考え方というよりは、すでに一つのライフスタイルになっている。1989年(平成1年)には、保健体育審議会が文部大臣(当時)に対する「21世紀に向けたスポーツ振興策についての答申」の中で、生涯スポーツが重要性を増すことを指摘。期待する点として▽楽しみ、気晴らし▽運動不足の解消▽体力づくり▽友人、仲間との交流▽家族とのふれあい──といった内容を明記している。

 シニア層がスポーツを楽しむ姿は、今や日常的に見られるが、2012年6月1日から3日まで、大津市の琵琶湖・柳が崎ヨットハーバーで開かれた「第22回全日本A級ディンギー選手権2012びわ湖大会」を訪ねてみた。往年の名選手らが集まり、レースを楽しむのだが、どうしてどうして、「マジ」になっている場面も多くみられた。

 A級ディンギーは、自動車でいうならクラシックカーの部類だろう。ややズングリした船体は、細長い板を重ねて張る「クリンカー張り(よろい張り)」で作られている。独特の味わいがあり、セールは1枚。本来はシングルハンド艇(一人乗り)。スキッパーとクルーの2人で競技することもでき、今回の全日本選手権は2人乗りで競技した。ヨーロッパでは根強い人気があるが、日本では新しい艇種の470級、スナイプ級などの普及に伴い、一時期、艇数が大幅に減った。ところが、近年は団塊世代やさらに高齢のセーラーが「昔乗った船」として再び命を吹き込んでおり、伝統的な木造ばかりでなく、FRP製の“速い”船体も登場している。

 全日本選手権には、全国から38チーム、300人余りが集った。大半が大学ヨット部のOB会を母体にしたチームだった。京都からは、京都大、同志社大、立命館大が参加。琵琶湖での開催は7年ぶり3度目で、同志社大のOB・OG組織「鯨会」がホスト役で大会を主管した。その鯨会の前会長で、元インカレチャンピオンの西村知明さんによると、「学生時代にA級ディンギーでレースを経験したのは、昭和47、48年ごろまでだろう」とのこと。現在、60歳を過ぎたばかりの年代ということになる。

 今回の全日本選手権でも60歳代が多かったが、スタートの緊張感や、マークを回航するときの競り合いなど、70歳代がまだまだヨット界の現役を感じさせた。参加名簿の中に80歳代が16人いた。ヨット競技は、自然相手のスポーツで「風を読む」豊富な経験が重要になるだけに、ヨットの所有、保管、活動する水域に恵まれれば、生涯スポーツとして年齢を超えて楽しめる。湖上でかなり白熱したレースを展開した参加者も、レセプションでは旧友に再会し、大会のキャッチフレーズ「出会いとふれあい」を満喫したことだろう。

第22回全日本A級ディンギー選手権2012びわ湖大会の風景
第22回全日本A級ディンギー選手権2012びわ湖大会の風景