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アルプス山岳滑翔

2009年11月09日

アルプス山岳滑翔―フランス「サントーバン飛行場」

 10月初旬に、フランス・サントーバン空港のSNVVでのグライダー学校で飛んできました。ここは、フランスの南部プローバンスで、地中海から北へ約100km。アルプスの入り口にあたる所です。SNVVは、フランス国出資の財団法人で、いわば国立のグライダー学校なのですが、申し込めばどの国のグライダーパイロットでも参加でき、1週間単位で受け入れています。

 月曜から金曜までで、朝9時から夕方の着陸までが一日分ということになります。望めば、土曜も飛ぶことができます。参加条件ですが、グライダー前席時間(自分で飛んだ時間)が150時間以上でOKです。以前は 500時間を要求されたそうですが、この基準を満たすパイロットは日本では少ないでしょう。

 別棟の個室の宿舎があり、朝食、昼食が用意されており、希望すれば、夕食もコックが用意してくれます。今回は、近くのレストランでフランス料理やイタリア料理でディナー、としゃれこみました。

 月曜の朝に、参加者全員(今回は29名。ほとんどフランス人で、カナダ人が2名、日本からは2名)でブリーフィングを受け、担当教官が決まります。ちなみに、日本からの今年度の参加者は合計4名でした。私たちの教官は23歳のガブリエルでした。私からみると、まるで息子のような若者ですが、フランス国内のジュニアチャンピオンになった経験があります。やはり、飛行センスがありました。ちなみに、他の教官はそれなりのお年でした。

 講義は、フランス語と英語が選べます。今回の英語班は、エディというカナダ人と私たちとで3名でした。機体は、今年や昨年製造の新型のグライダーばかりです。複座は、翼幅が25mもある「ニンバス4」も含めて 6機。単座も新しいもので、10機ほどあり、それぞれ搭乗者が決まっています(ただしすべてドイツ製です)。

 フライトは、午前に気象(METEO)の講義を受け、それぞれの機体をハードランウェイに並べてから昼食をとり、13時からフライト開始です。複座から先に飛び始めます。なぜ昼からかというと、ここサントーバンは地中海から約100km北部にあり、午後から南風、つまり海風になり、その風がアルプスの山々にあたり、上昇風が発生するからです。

 それぞれの山脈の尾根には名前がついており、風向や風力によって上がる場所が変わります。尾根は日本の穏やかな山と違い、ほとんどが岩山です。いわば「崖(がけ)」ばかりで、そのすぐそばを飛びます。飛び方は、山の斜面に風が当たって風が上昇する中を飛ぶのが「スロープソアリング」、そこで上昇して、山の尾根筋を飛ぶのが「リッジソアリング」で。時速100km以上で高度を下げずに何キロも飛ぶことができます。滑空場から数10kmも離れた山脈内を飛ぶため、風が弱くなると飛び続けられなくなります。しかし、そこは国立の学校だけあって、 いつでも場外着陸ができるように調査されており、50ページもある立派な冊子には、おのおのの不時着場の写真まで載っています。

 わたしにとって“目からうろこ”でしたのが、今まで上昇気流は、空をみて、積雲を探して、飛べる状況を判断してきたのですが、ここでは空模様は関係ありません。風さえ吹けば、スロープソアリングや、リッジソアリングが可能です。つまり 空を見て雲の状況を判断する必要がないのです。これは、驚きの発見でした。ただし、リッジソアリングと、積雲によるサーマルとをミックスしてソアリングするテクニックは当然あります。つまり尾根の上を飛びながら、太陽が照らしている斜面側に寄り、熱によるサーマルをつかんで雲低まで上昇する―という飛び方です。 100km以上離れたスイスアルプスや、イタリアアルプスまでも飛んでいけるそうです。

 ここは、ベテランがより技量を向上させるための学校です。実質、フランスの国家が運営しているという事実に驚かされ、またうらやましい限り、と感じた次第です。今回は、フランスアルプスを飛ぶグライダーからの写真をお見せします。珍しいのは「FRAM」という衝突防止用警告機で、ここではすべてのグライダーに装着されています。 他のグライダーが近づくと、その方向と上下が表示され、もっと近くになると、警告音が鳴ります。

計器盤の上にあるのが「FRAM」で、前後席に ついています。
計器盤の上にあるのが「FRAM」で、前後席に ついています。

崖でのフライトで計器の「FRAM」は、上空の13時方向に別のグライダーが飛んでいることを示しています。
崖でのフライトで計器の「FRAM」は、上空の13時方向に別のグライダーが飛んでいることを示しています。

岸壁を飛ぶ2機のグライダーで、ここを行ったり来たりで高度をあげます。
岸壁を飛ぶ2機のグライダーで、ここを行ったり来たりで高度をあげます。

谷底をへばりつくように飛ぶグライダー。ここからだんだん高度をあげます。
谷底をへばりつくように飛ぶグライダー。ここからだんだん高度をあげます。

グライダー学校にずらりと並んだ機体。
グライダー学校にずらりと並んだ機体。

地上の雄大な景色
地上の雄大な景色