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日本のグライダー事情

2010年05月06日

学生、社会人で計2200人の愛好者

飛騨山脈を飛ぶ
飛騨山脈を飛ぶ

 アジアでグライダーをスポーツとして飛ばしている国は、いまのところ日本しかありません。インドではイギリスの植民地であった関係で、一部で飛ばしている、とフェラーリをイタリアから日本へ運んでいるアリタリア航空のキャップテンに聞いたことがあります。韓国ではかなり前ですが、日本からグライダーを運び、日本のクラブの協力で大韓航空のキャプッテンが飛ばしたことがあります。あと、中国では大同で飛行機とグライダーの訓練をしているそうですが、クラブ員が飛行を楽しんでいるのではなさそうです。

 その他の国、台湾、香港、タイ、シンガポールなどでは(たぶん、マレーシア、ミャンマー、パキスタンも同じでしょう)、GLIDERと言っても理解されず、彼らの辞書には無い単語で、意味を説明しても理解されません。

朝の離陸前のグライダー組み立て作業
朝の離陸前のグライダー組み立て作業

 世界に目を向けると、欧米には長い伝統があります。今もグライダー先進国として、イギリス、フランス、イタリア、スペイン、チェコ、ポーランド、オーストリア等で盛んで す。特に、同じ第二次大戦の敗戦国であるドイツは、現在グライダーの製造は世界一であり、最新鋭のグライダーを次々生み出しております。また、現在も州立のグライダー学校があり、税金を投入して援助しています。現在もドイツでグライダーが盛んである理由の一つに、第一次大戦に負けて飛行機を飛ばすことを禁止されたのですが、プロペラの無いグライダーで訓練を続け技量を保持した歴史がありからです。

 またフランスでは、国立のグライダー学校があり、世界からフライトの訓練を受け入れています。面白いのは、以前はイギリス、スイス、フランスなどでグライダーを製造していたのですが、現在はほとんど製造しておらず、東欧のチェコやポーランドで製造していることです。ちなみに、日本も現在はまったく製造していません。

 あと、オーストラリア、ニュージーランド、アメリカ合衆国、カナダ、アルゼンチン、チリなども飛ぶ環境があります。これらの国々には、世界からいい気象条件を求めて飛びに行くグライダー愛好家がいます。特にアメリカ・ネバダ州ミンデンでは、高高度を飛ぶことができ、旅客機が飛んでいる30,000フィート以上を経験できます。

槍ケ岳へ向けて、エンジン付き小型機で曳航されるグライダー
槍ケ岳へ向けて、エンジン付き小型機で曳航されるグライダー

 ところで日本についてですが、組織として大きく分けて二つあります。一つは、大学の体育会グライダー部をまとめている日本学生航空連盟で、今年で80周年を迎えました。 ほとんどのグライダー人がここで基礎訓練を受けています。参加人員は関東で約350名、東海関西で約250名の合計700名強です。昔は、1200名もいた時期がありましたが、経済の停滞とともに減りつつあるのが残念なことです。練習場所は、北海道、関東平野、中部地方、中国地方、九州で、残念なことに関西地方にはありません。

 あと一つは、社会人が運営するグライダークラブで、全国に約50組織があります。その会員数は1500名くらいと思われ、ここ何年かは変動はないようです。40年くらい前から 大学の卒業生が毎年200名くらい卒業していますので、合計で8000名のグライダー経験者がいるわけなのですが、一割強しか現役で飛んでいないことになります。

槍ケ岳を望む飛行
槍ケ岳を望む飛行

 その活動は、地方公共団体が事業として運営しているものと、純粋に民間人が運営しているものがあり、大半が後者です。飛ばす場所ですが、飛行場で飛ばせればいいのですが、日本では入れてくれず、大半が河川敷を開拓して滑空場として使っています。陸上自衛隊の飛行場を借りて飛ばしているクラブもありますが、当然、休日のみです。

 グライダーを飛ばすには、少なくとも幅50メートル以上、長さは600メートル以上が必要です。なるべく平らで、前後に障害物が無いほうが望ましいですが、狭い日本ですので 曲がっていたり、斜面を駆け上ったり、一方方向でしか離陸できないなど、あまり良い環境ではありません。そして国などからの援助はほとんどありません。だいぶ前になりますが、文部省(文部科学省)が“指導者講習会”という名前で全国から該当する人を集め、無料で1週間、訓練をしていたこともあったのですが。

飛騨農道空港周辺の景色
飛騨農道空港周辺の景色

 欧米などへ飛びにいくと、アジアの片隅で最新のグライダーで飛んでいるのか、と大変興味をもたれ、話が弾みます。次回は、グライダーをどのようにして飛ばすか、なぜスポーツなのか、どのようなグライダーがあるのか、ということについて話そうと思います。

(写真は、私が所属する“関西エアロスポーツクラブ”が5年くらい前の5月に、中部日本航空連盟が主催する飛騨農道空港での合宿に参加して、北アルプスを飛んだ時に撮影しました。本場ヨーロッパアルプスには規模で劣りますが、上空から見る槍ヶ岳、穂高、上高地など眼を見張る日本独特の美しさがあります)

後方には御嶽山が美しい乗鞍岳の飛行
後方には御嶽山が美しい乗鞍岳の飛行